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2015-07-15 18:43 | カテゴリ:病棟の人々
(※断酒38日目/退院まであと5日)
 今日から月曜まで、日中は病棟の水回りが使用できないという。何でも別の病棟の工事とかで、朝の9時から夕方5時までは排水ができないらしい。突然の周知にも困ったものだが、文句を言ったところで始まらない。


 土曜はお休み、と公言していたはずの利根川さんがAA「アカゲラ」のミーティングへ出かけるというので、一緒に行くことにした。日曜の院内AAには何度か参加している「アカゲラ」は毎週月、木、土曜の3回、北町の25丁目教会でミーティングを行っているが、会場が病院から遠いこともあって、まだ院外のミーティングに足を運んだことはなかった。土曜日は午後2時から開始とのことで、昼食後すぐに病院を出た。

 西町駅で、利根川さんが乗車券として使用するプリペイドカードを買うという。利根川さんら生活保護受給者は、申請すれば自助グループ参加のための交通費も全額支給されるのだ。
 いつもは1,000円分とか3,000円分とか、決まった金額のカードが券売機で買えるはずなのだが、どういうわけかそれができなくなっている。駅員さんによると、なんでもチャージ式のICカードに変わりプリペイドカードが廃止になるため、新規の購入はできなくなったらしい。
 ということはその、ICカードを新しく買ってチャージしなければならないのだが、途端に利根川さんが焦り始めた。買い方がよく分からないうえに、僕を待たせていることが申し訳ないと思ったのだろう。AAの開始時間もある。
 使い捨てのプリペイドカードに比べて、チャージ式ICカードの新規購入は名前だの何だのを入力するので、不慣れな人からするとひどく面倒なものかもしれない。カード購入機のタッチパネルを操作する利根川さんの指が震えている。明らかにテンパッているのが分かった。
「あの、サトウさん、す、すいません。先に行っててください」
 声もどこかうわずっている。
 ―― あ、これが利根川さんの症状か。
 そう直感した。

 利根川さんはアルコール依存症と併せて、パニック障害、強迫神経症というココロの病気を抱えている。普通の人なら気にしないような取るに足らない出来事にでも、急に大きな不安に襲われて、極度に混乱してしまうのだ。利根川さんの場合、例えば自宅から外出しても、戸締りはしたか、ガスの栓は閉めたかなど、細かいことが病的に気になって不安に陥るのだそうだ。
 思えば僕も似たようなものだ。もともと過度な心配症ではあったけれども、精神的に不安定なときは特に妄想が顕著になる。道を歩いていても頭上から何かが落ちてくるのではないか、一時停止の車が突然動いて轢かれるのではないか、背後からカラスにでも襲われるのではないか ――
 入院直前の僕はそんな不安に襲われることが多々あった。大阪で生活する自信を失くした頃もそうだった。少なくとも、激しい強迫観念に取り憑かれるという意味では、僕も他人事ではないのだ。

「大丈夫ですよ。僕もICカードの買いかた知りたかったし。ゆっくり行きましょう」
 ひとりで先に行くなんて、できるわけがない。利根川さんを待って、少し遅れてAA会場へと向かった。


 帰り道。西町駅から路線バスで帰院するという利根川さんと別れて、ひとりで歩いて病院へ戻った。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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