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2015-03-18 17:44 | カテゴリ:病棟の人々
(※断酒27日目/退院まであと16日)
 午前中、米窪さんと福井さんの3人で散歩へ出かけた。福井さんと外出するのは久しぶりだ。坂を上ったところから住宅地を抜け、西町総合公園の原生林を通って駅前のショッピングモールへと歩いた。5月の連休最後に、康平くんも加えて歩いたコースだ。
 外は陽射しがきつかったが、森に入ると一気に涼しくなった。
「この時間なら、ヘビは出ないな」
 米窪さんが知ったようなことを言ったそばから、先頭を歩いていた僕の足元を大きなヘビがしゅるしゅると音を立てて横切っていった。死ぬほどビビって思わず声をあげた。
「俺みたいにひねくれたヘビなんだよ」
 出ないと言ったのに出たことの言い訳がこれだ。
 そのまま先へ進むと、またヘビに遭遇した。脇道にいたところを、向こうから山道散歩に来た男性が見つけて木の枝でやっつけようとしていたが、逃げられたらしい。その男性によると、マムシだそうだ。
 さらに歩いていると、大木の根元に集まるシマリスを何匹も見かけた。ここが原生林なのだと改めて感じた。
 幼稚園の年長組だろうか、子供たちと引率の先生の一行とすれ違い、挨拶を交わした。マムシのことは言わなかったが大丈夫だっただろうか。
 駅前ショッピングモールで少し時間を潰し、病院バスで戻った。


 昼食後のレクでは今日もミニバレーで汗をかき、シャワーを浴びた。体育館は蒸し風呂のような暑さだった。
 その後一息ついていたところへ、室戸薬剤師が訪ねて来た。先日僕が服用を試したいと言った薬『レグテクト』について、メーカーのパンフレットを持って来てくれたのだ。日本では昨年発売されたばかりのこの薬は、頓服薬としてではなく継続して服用するものだが、やはり下痢以外に深刻な副作用は考えにくく、価格も保険適用の3割負担で1日分約 100円、エビリファイなどの安定剤や眠剤との飲み併せも問題ないそうだ。
 脳に作用して、飲酒欲求そのものを抑える薬 ―― 僕に合うか合わないか、今のうちに試してみるべきだと思った。


 迫さんが戻って来た。外泊時に自宅で4回目となる飲酒をしてしまい、いったん任意退院したそうだが、今度の再入院で改めてビギナーから1クールのリスタートとなるそうだ。
 デイルームの喫煙室で、僕は迫さんに退院が決まったこと、来月から職場復帰することを伝えた。
「仕事があるんならそれに越したことはないし、ぜひ退院するべきだよ。オレはすることもないから、いつまで病院にいるかな…」
 その前に迫さんはスリップしないよう気をつけたほうがいいと思ったが、余計なことは言わなかった。
「まあ今度は節酒じゃなくて断酒を目指すけど、次に病院とモメてブチ切れたときは、看護師の目の前で飲んでやるから」
 そう言って不敵な笑みを浮かべた。お酒をやめる気があるのかないのか分からない人だ。モメるとかブチ切れるとか、どうも穏やかでない。

 病院に内緒でパチンコに行って来た高津さんが、市街地の商店街で勝瀬さんに偶然会ったという。
「元気そうで、明日明後日はデイケア来るって言うとったよ。エラい元気やった。酒の臭いはせんかったけど、あんまり近づいとらんかったから、分からん」


 今日のAAは北町12丁目教会の「はましぎ」だ。前回は会場変更になったため、初めての場所になる。優二さんと一緒に出かけたが、駅へ向かう病院バスの中で師長と隣になり、話をした。
 沼畑師長は高校時代、将来は結婚をせずに医者か弁護士を目指していたのだという。進学による経済的負担を考えて看護師志望に転換し、短大へ進んだそうだ。看護師としてデビューしてからはずっとこの柏ノ丘病院で仕事をしている。
「看護師さんも志望の科ってありますよね? 選べないんですか」
「いちおう希望は出せるけど、やっぱり必ずしもなれるわけじゃないかな」
 肛門科を志望した看護師がいたら一度話を聴いてみたいと思っていたが、やはり希望通りにはいかないものかと納得した。
「…精神科って、最初は抵抗なかったですか?」
 看護師さんの本音はどうなのだろう。患者の前ですべて話せるわけではないだろうが、いちおう訊いてみた。
「私は婦人科、精神科、脳外科の順で希望してたから。精神科はもともと興味があったし」
 抵抗はないということらしい。
「もっとも私、血を見るのが苦手なんで。5ーA病棟にいたとき、リストカットで運ばれた患者さんの傷口見たときはショックだったけど。今は仕事だと割り切ってるかな」
 いろいろ突っ込みどころはあるが、なんだかリアルな告白だ。

 病院バスは職員も利用するため、僕らが院外自助へ向かうために乗る最終5時40分のバスには日勤終わりの病院スタッフとも一緒に乗り合わせる。
 今日も僕らの斜め前には小里看護師が座っていたが、彼女に限らずどうもみんなよそよそしい感じがする。患者と近い距離で接する仕事なので、勤務が終わったら完全なオフになりたいのか、僕ら患者に気を遣っているのか分からないが、こちらとしても見慣れない私服姿でプライベートな時間に入ろうとしている病院スタッフに気軽に話しかけるのはためらってしまう。
 そんなことを思うとき、ふと「やっぱり精神科って、抵抗あるのかなあ…」とネガティブだけど妙に共感できる推測をしてしまうのだ。
「あ、私、注射も嫌なの。師長になってからやってないけど」
 なぜか沼畑師長は別だ。
「こないだ何げに笑顔で歩いてたら、同僚に『コワい』って言われちゃったの。これでも私傷つくんですけど」
 最初に師長と話したときの印象は、3ヶ月近く経った今でも変わっていない。ざっくばらんな人だ。ご主人はタクシーの乗務員をされていて、生活の時間が合わないことが夫婦がうまくいくコツ、のようなことを以前言っていた。一見ドライでプライドが高そうな感じがしないでもないが、それはそれとして、情の深い人でもある気がする。
「やっぱり『師長』って、コワい感じとかに見られちゃうのかな?」
「人によるんじゃないかな」
「私はどうなの?」
「さあ、知りません」

 西町駅前で師長と別れ、電車で北町12丁目の教会へ向かう。途中、中央町の駅で乗り換えが必要で、今まで足を運んだ会場の中ではいちばん遠い場所に位置している。
 優二さんは今日の院長の回診で、明日の退院の延期が決まった。退院の日は未定だというが、仕事探しの状況も踏まえての退院になるのではないだろうか。
「予定が二転三転して大変でしたね」
「まあ、仕方ないよ。こればっかりは」
 とは言いつつ、正直ホッとしている様子だった。


 AA「はましぎ」のミーティングは院内を含めると8回目だが、院外では先週土曜に続いてまだ2回目、ホームグラウンドの北町12丁目教会は初めてだ。院外では火、木、土曜にミーティングをしているが、来月から木曜のみ中央町に会場が変わる。実家の近所、通勤途中にある会場なので、退院後も参加しやすい場所になるだろう。正直このグループにはまだ慣れていないが、何度かは行くつもりだ。
 帰りはまた、ユウさんに車で送ってもらい帰院した。

 様々な人と話した日だった。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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