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2015-02-24 13:53 | カテゴリ:AA
(※5度目のスリップから15日目)
 今日は渡辺先生の回診がお休みのため、午前10時半からのレクまでのんびり過ごした。レクでは今日もミニバレーで汗をかいた。途中、牛本主任や沼畑師長も加わって楽しかったが、ほぼ1時間ぶっ通しでゲームをするのはさすがにしんどい。とはいえ患者の中では僕がいちばん若いのだが。

 昼食前、麻友美さんから連絡があった。いま外来に来ているという。顔を見に1階玄関前まで降りて行くと、やつれた様子の彼女がいた。生活のサイクルが昼夜逆転して、昼間はとても眠いのだという。火曜に予定していた外来も、起きられずに行けなかったそうだ。
 左手首に大きな絆創膏がしてあり、カッターで自傷したのだという。傷痕を見せてくれたが、元の夫と自分、それから息子のイニシャルを彫ろうとしたらしい。太腿にも青アザが至るところにあり、爪で息子の名前を引っかいた、と言っていた。
 元気どころか、どんどん悪くなっているのが素人目にも分かる。一日中引き籠っていて、AAに行く気にはとてもなれないそうだ。
 話を聴いてあげるだけで、何もできないことにもどかしさを感じた。何を言っても、彼女の気持ちを余計に傷つけたり、逆なでしてしまう気がする。僕が彼女にしてあげられることとは何なのだろう。そんなことを考えているうちに、看護師さんが彼女を呼びにやって来た。


 昼食後、1時の病院バスで料理の買い出しに行った。洋子さん、山形さんのほか中山さんも加わって4人での買い物だ。
 今回は患者8人、スタッフ4人の計12人と聞いていたが、洋子さんが大田看護師から渡されたお金は1人300円×11の3,300円だった。会計前にそれに気づいた僕は、念のため5ーB病棟の詰所に電話して確認しようとしたが、洋子さんに「渡されたのはこの金額なんだから、電話なんかしなくていい」と言われ、ムッときてしまった。
 前回の料理の買い出しの際、研修生と一緒にイレギュラーで参加する勝瀬さんの分がカウントされていなかった。今回も、漏れている誰かがいるといけないので確認しようと思っただけなのだが、次第に売り言葉に買い言葉になってきて、「そんなに言うなら電話してよ」「いや、じゃあいいですよ」とこちらもムキになって確認をしなかった。会計はほぼ3,300円で収まったのだが、僕は自分が腹を立てたことで空気を悪くしたことに、すっかり気落ちしてしまった。
 病院に戻ったあとで大田看護師に確認すると、やっぱりひとり分が抜けていたことが分かった。今度は洋子さんが、本来使えるはずだった 300円を「今から買い物に行って来る」と譲らない。僕はそれ以上言うのをやめ、洋子さんに判断を任せた。その後どうなったかは、まだ聞いていない。


 3時からのSSTは、ウォーミングアップでいきなり一宮OTが「演劇のトレーニングで応用できるものがあるみたいです」と口火を切った。嫌な予感がした。先日一宮OTからデイルームで、劇団の基礎トレーニングで行うウォームアップについて質問された。僕はいくつか例を挙げて簡単に説明した。そのとき「SSTに必ずしも応用できるとは限りませんよ」と念押ししたはずだったが、嫌な予感は当たった。
「サトウさんから説明して貰ったほうがいいと思うんですが…」
 一宮OTにしてみれば、場が盛り上がると思ったのか、僕の個性なのか何なのかを活かせると考えてくれたのかもしれない。ただ、僕にとってこんなムチャ振りはない。確かに芝居の基礎トレはいろいろあるが、SSTのウォーミングアップにそのまま使えるわけではない。事前に聞いていないので何がどう使えるかも分からないし、実際にやってみて、かえって雰囲気が悪くなる可能性だってある。そう簡単に「そうですか、分かりました。ではとっておきの ―― 」とはならないのだ。
 僕の必死な拒否ぶりを見かねた牛本主任が、「じゃあ今日は通常バージョンの『お絵描きしりとり』でいきましょう」と拾ってくれた。手汗が噴き出して止まらない。一宮さんからは「無理言ってすみませんでした」と謝られた。
 7、8人が教室にいたが、みんな無言だ。シラけた空気に、ヘコんだ。
 そのあとの本題は相変わらずノープランで進んで行き、先日登った父親の話になった。僕はこの話題が苦手だ。優しい父親、厳しい父親、だらしのない父親、無口な父親。みんなそれぞれの父親について話すが、どれもそれぞれにとっての、懐かしくて感謝の記憶だ。
 僕は自分が苦手な話題、ついていけない話題、嫌な話題になると、途端に孤立する。
 話を振られる前に、僕はSSTを中座した。


 4時からの3回目のカウンセリングで、田村心理士に今日のバレーのこと、買い出しのこと、SSTのことを話した。カウンセリングがなければ、それこそ飲酒欲求に負けていたかもしれない。今日この時間、カウンセリングがあったおかげで僕はスリップせずに済んだ。ミニバレーにしても、このカウンセリングがあったからこそ、僕は自分の背中を押してもらうことができた。
「田村さんにはいろいろ助けられています」
 僕としては本心のつもりだったが、田村さんは心理士らしい見解を言った。
「そうなんですか? 私は別に何もしてませんよ。サトウさんがご自身でできたことや、飲まずにいられたことを、そうやって自分以外の誰かのおかげにしているのも、自信の無さからくる自己防衛なんでしょうか。前回も言いましたが、私はサトウさんの中に凄いギャップを感じます。自分に自信を持てず、他人や集団とうまく交われないことでご自身を責めて自己防衛に走るサトウさんと、あれだけ抵抗のあったバレーやカーテンの件を次の週までにさらっとやってのける、積極的なサトウさんとのギャップです。これは一体、何なのでしょうか」
 何なのだろうか。自分でもそのギャップを感じることがある。いつからこんなふうになったのか、中学、高校の頃か。芝居をしていた大阪でも、自分でも驚くほど積極的にオーディションや入団テスト、稽古場見学に足を運んだこともあった。

「ご自身の、ついていけない話題になるとシャッターを降ろしてしまうというのは、カウンセリングでアドバイスすることはできません。それこそSSTで相談してみたらいかがですか?」
 またひとつ、宿題を貰った。次週のカウンセリングは同じく木曜だが、SSTの終わる時間を考慮して4時10分からにしてもらった。


 カウンセリングから戻ったあと、早出し夕食を済ませて南町教会の「オオタカ」へ向かった。今日は利根川さん、優二さん、植中さん、関根さん、山形さんと僕、6人での参加だ。
 教会に着いて分かったのだが、今日は「ヤマ」さんという60代くらいのAAメンバーの男性が、断酒から4年という節目を祝う「バースデー・ミーティング」だった。このグループでは毎月最終週の木曜がこのミーティングにあたるらしく、最後に飲酒した日からを自己申告で換算した、いわゆる「誕生日」を迎えた人をお祝いするのだ。ヤマさんにはAAメンバーや、今日このミーティングに参加した一同からの寄せ書きと記念メダルが贈られ、僕もお祝いメッセージを一筆書かせてもらった。
 ミーティングでは順番にひとりずつ、ヤマさんへのお祝いや想い出なんかをコメントしていくのだが、当然僕には積もる話などはまだないわけで、ありきたりではあるけれど率直なお祝いの言葉と、これからよろしくお願いしますという挨拶だけを伝えた。
 話が廻るなか、今日改めて抱いた僕の心の歪みが頭から離れない。些細なことでムキになり、直後に自己嫌悪に落ち込む自分。ついていけない話題に勝手に孤独を感じ、自らシャッターを降ろす自分。ヤマさんと旧知のメンバーの方々が、心の込もったコメントや想い出を口にするのを、素直に聴けない。
 僕は身勝手で、孤独だ。AAに来ても、結局何も変わらないのかもしれない ――

 そう思っていたら、グループから突然僕にメダルが贈られた。今日初めて「オオタカ」のミーティングに参加した関根さんに加えて、ヤマさんが「サトウさんもでしょ」と促してくれたのだ。最後のスリップからまだたったの15日の僕だが、初めの一歩という意味で頂いた『1day メダル』。例えこの先またスリップしてしまっても、また1日断酒をすれば、またこのメダルを貰える資格が生まれる。いきなり4年、10年を目指すのではなく、「今日1日」の積み重ねで1週間、1ヶ月、半年…と継続していくのだ。




 その日集まった、メダルを受け取る人を除いたすべての参加者の手にそのメダルを回し、断酒継続の祈りを込めて贈呈するのが習わしだそうだ。フクロウのストラップの副賞も頂いた。フクロウはアイヌ神話では神様の化身だ。お酒との関連はよく知らないけれど。
 小さな、プラスチックのメダルに過ぎないが、嬉しかった。「飲まないこと」を祝って貰えたのは、人生で初めてかもしれない。

 病院へ戻ったあと、優二さんから日曜に北東教会で行われる「オオタカ」のミーティングに誘われた。日曜日のミーティングだけあって、参加者も多いらしい。病院から公共交通機関を利用するため少し遠いが、僕が前から行ってみたいと言っていたところだ。僕はもちろん行くことにした。


 散々な思いもした一日だったけれど、最後に実感できた。僕は孤独なんかじゃない。自分で孤独だなんて思い込むな。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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