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2014-08-18 18:15 | カテゴリ:外出・散歩
(※5度目のスリップから3日目)
 今日の昼食はあんかけ焼きそばだった。前にこのメニューが出たのは、入院3日目の昼食だった。「あん」がどうのと、どうでもいいことに驚いたことを思い出した。

 週末は外泊する患者が多い。53号室でも、周さんと高津さんが昨日から外泊に出ていて、平嶋さんと勝瀬さんも今日から出かけて行った。そしてついに僕も今日、外泊組のひとりになる。
 53号室は今晩、米窪さんと黒部さんのふたりだけだ。黒部さんは入院してまだ日が浅いが、米窪さんは未だに奥さんと子供のいる自宅外泊に踏みきれないでいる。外泊は退院後の生活を意識した訓練という位置づけだ。そのため朝から看護師さんに、そろそろ外泊を試してみるよう説得された米窪さんは、テンションが下がりまくっていた。


 僕は今日の午後2時から明日の夕方6時までを外泊申請していたが、あまり早く実家に戻っても、それはそれですることがないので、午後3時50分の病院バスでスーパー柏ノ丘店前まで行き、そこから15分くらい歩いて実家へ向かった。
 鍵を忘れて来たので、実家マンションの玄関ドアのチャイムを鳴らすと、母が出た。母の第一声は「あんた、髪伸びたねえ」。笑っていた。つい月曜に顔を出しているのに、その記憶はまるごとどこかに抜け落ちているようだった。
 病院からは、家族が患者の外泊時の様子を記入して提出するチェック票のような書類や、病院が実施する依存症患者の家族向け教室の案内、頓服薬として眠剤やジアゼパムを定量入れた封筒を預かっていた。僕は必要な書類と、午前中にコンビニでコピーしておいた心理検査の報告書を父に渡した。

 夕方、父はいつものように車で買い物に行き、自分が飲むための焼酎やらを買って来て、いつものようにいつもの座椅子に座って飲み始めたが、僕にはむしろそれで良かった。万一、父が僕に気でも遣って今日だけ飲まなかったなら、僕はかえって不安になったと思う。今日だけ父に我慢なんかしてもらっても意味はない。僕にとって重要なのは、退院後に「僕が」お酒とどう向き合うかなのだ。
 兄は今日、僕が戻って来る前に顔を出したそうだ。夕食は、義姉が作ってくれたおかずやたくさんのおにぎりをレンジで温めて、ナイター中継を観ながらつまんだ。
 父からは、いまのコールセンターの仕事について、「本当に自分に合っていると思って続けていくのか」考えてみるよう言われた。確かにその通りだ。僕は現在の職場が、というよりこの仕事そのものが自分に向いているとは思えない。喋る仕事に抵抗はないが、相手の怒りに触れないよう振る舞うのは神経をすり減らす。僕は常にびくびくしている。コールセンターは応答率が命で、建前では「お客様の満足に応える」とはいっても、ときには冷たいほどてきぱきと効率よくさばいていかないといけない。電話業務は、特技も資格も体力もない僕が、大阪時代から「何となく」選んでやっているだけだが、3社目となるいまの仕事は特に数字で評価される重圧を強く感じ、常に追い立てられている気がする。ましてや、1日の業務を終えたときの充実感など一切ない。ただ、逃げるように会社をあとにし、翌日朝までの時間を惜しむようにひたすら飲んだ。
「大阪での生活がそうだったように、お前がやりたいのは“モノをつくる”ことじゃなかったのか?」
 モノをつくるにもいろいろあるが、父の言うことはその通りだ。退院してすぐにとはいかないが、仕事についても考えていかなければならない。それが、僕がお酒と距離を置くうえでも大きく関わってくるはずだ。
「お前はあと30年は生きられるんだぞ。俺はもう先はないけどな」
 と、父は言った。相変わらず最後のひと言は余計だ。父の言う通りだと僕は70歳まで生きられない計算になるが、それでも今お酒をやめれば、確かにまだ僕には時間があるはずだ。焦ってはいけない。

 少しほろ酔いになった父は、義姉の料理のお礼を口実に兄へ電話をかけた。入院してから僕は、兄とは直接会話をしていない。父としては、兄と話をさせようという思いがあったのだろう。電話をかけ、簡単な挨拶とお礼を伝えた父は、電話の子機を僕に手渡した。
「…元気か?」
「まあ、ぼちぼち」
「仕事、とりあえずクビにならなくてよかったな」
「うん」
「あんまり親に心配かけんなよ」
 穏やかな口調ではあるけれど、叱責されて当然の言葉だ。
「うん」
「これ以上言うと説教になるから言わないけど、とにかく今はちゃんと休んで、あとはそれからだぞ」
「うん」

 夜9時。父は自室に入り、僕はテレビ放映の映画を観た。前にもテレビで観た邦画だが、そのときはもちろん酔っていた。
 念のためジアゼパムは飲んでいたが、ベッドに入る前に眠剤も飲むことにした。しばらくブログを書いていたが、間もなく眠気がやって来た。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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