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2014-05-22 16:43 | カテゴリ:院内生活

 入院してから3日半。5ーB病棟には51~55号室まであり、現時点で男性が30名弱、女性3名ほどが入院生活を送っているらしいことが分かってきた。
 今日まで、看護師以外の患者とはほとんど喋っていない。
 カーテンを閉めきった自分のベッドで携帯をいじるか『鬼平』を読むか、寝るか。
 あいにく寝るといっても、目を閉じても様々な不安が頭をよぎり、眠ってしまうということはない。
 ―― アルコール依存を克服できても、この慢性的な不安感と社会への恐怖心、自己嫌悪と倦怠感から脱け出せなければ、また同じことの繰り返しになるんじゃないか。今度はギャンブルやクスリに逃げ出すんじゃないだろうか。

 どきどきふらっとベッドから起きて、喫煙室でタバコを吸う。マイルドセブンとわかばを立て続けに1本ずつ。3本目に手が伸びることもある。先に誰かが一服していても、あとから誰かが入って来ても会釈を交わす程度で、僕のほうから話しかけることはしない。できない。
 何度か話しかけられ返答しても、あとが続かない。一応、会心の笑顔で答えているつもりだが、まともに相手の顔も見られない。そして、「…」しか出てこなくなる。
 それが自分でもしんどくなり、いつしか『話しかけないでオーラ』みたいなモヤモヤが僕の頭の周囲を覆っているように見えるのだろう。
 僕が僕から人を遠ざけるのに、時間は一切かからない。


 ベッドと喫煙室の往復だけではもちろん生活できないので、洗面所やトイレ、食事を受け取りに行くときは、時間をずらすことにした。
 大浴場は3階にあり、他病棟の患者も利用するため、一般の銭湯と同じと思えば問題ないのだが、利用できる曜日や時間が限られているため不便でもある。そんなときは、毎日朝の6時から利用できる病棟専用のシャワー室を使えばよい。よいのだが、このシャワー室は当然共用である。
 シャワー室を使う際はドアノブに吊るされたホワイトボードに自分の号室と名前を書き、「いま私が入ってますよ」とお知らせする。「次、私入るねー」という人は、シャワー利用中の人の名前の下にやっぱり自分の号室と名前を書いて「予約」する。
 シャワーから出た人は、ボードに次の利用待ちの人の名前を見つけると、「○○さーん、シャワーOKですよー」と、直接呼びに行かなければならないのである。
 この「共用」というアットホームこの上ないシステムは、今の僕には何とハードルの高いことか。誰が誰だかも分からないまだ見ぬ患者の病室へ『女将さーん、時間ですよ』ばりに直接声をかけに行くことが、どれだけ恐ろしいか。

 それでもどうしても、せめて頭くらいは洗いたい僕は今日、朝食後のややまったりした病棟の光景に、たまたま『空白のシャワータイム』を見つけたような気がして、実に迅速に初シャワーをやってのけた。
 まるで何かの罰ゲームのような勢いで身体を洗い、洗髪も完了。床のタイルに淫らな毛のひとつでも流し忘れていないか素早く確認し、高速で身体を拭き、高速で着替え。タオルやシャンプー、脱いだ下着などを手早くまとめて撤退準備が整うと、恐る恐るシャワー室のドアを開けて、ホワイトボードを確認 ――

 次の順番を待つ名前はなかった。安堵。僕は人と交われないのだ。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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