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2014-07-08 23:48 | カテゴリ:入院生活
(※スリップから4日目)
 土曜日は暇だ。ARPの予定が何もない。外出や外泊をする人も多く、従って事件も少なく、平和だ。看護師さんも日勤、夜勤ふたりずつ程度で、デイケアもないので病棟に人の往来がないのだ。勝瀬さんも、朝から外泊で自宅へ帰って行った。静かな、まったりとした一日が過ぎていく。

 最近、隣の54号室のスピーカーが入らない、と清水さんから苦情が出たらしい。食事の準備ができた際やARPが始まる前に、詰所から5ーB病棟の各病室にその旨を放送で知らせるのだが、清水さんたちの54号室だけアナウンスが聞こえないというのだ。
 僕のいる53号室はデイルームの正面、詰所も斜め向かいと近いので、病室にいても食事やARPの時間は外の物音や人の喧騒でなんとなく分かる。それ以前に、1週間の予定は患者に配られたスケジュール表に記載されているし、変則日程になることはめったにない。53号室の放送が聞こえなくなっても僕はあまり困らないのだが、実際困る人がいるのだから、それはそれで問題なのだろう。
 数日前に業者を呼んで点検したが、異常は見つからなかったそうだ。それでも、
「聞こえないもんは聞こえないんだ」
 と清水さんは納得しない。どうもこだわっているのは清水さんだけなのだが、同じ54号室の植中さんも「そう言えば、聞こえないときもありますね」と同調するので、昨日また業者が来たらしい。結果は変わらず、やはり異常はなかった。
 清水さんは普段、ベッドでイヤホンをしてラジオを聞いたりしていることが多いそうだ。まさかとは思うが、アナウンスが聞こえないのはそのせいだったらしい。誰かに指摘された清水さんは「あ、そうか」と言ったとか言わなかったとか、という話だ。植中さんも昼間はよく寝ているので、そりゃ聞こえないときもあるはずだ。
 業者呼ぶ前に気づけ。ここはそんな患者の集まる病棟だ。


 昨日の晩、麻友美さんが3階病棟に入院したらしいという噂を聞いた。そんなはずはないだろう、とその場にいた誰かが言っていたが、僕もそう思う。病棟を抜け出して3階に様子を見に行こうかとも思ったが、オレは何を考えてるんだ、と思い直してやめた。
 それでも心配になって、メールをしてみた。しばらくして返信が届いた。
「ボロボロです」――
 余計心配になったが、やっぱり3階に入院なんかしていない。ただ、メールするのもしんどい気分らしい。メールは「したいときにだけすればいいから」とだけ返した。
 僕は何をやっているんだろう。何のためにここに来たのだろう。
 先週、石橋看護師から言われたあのことが頭をよぎる。
 ――「サトウさんは鬱じゃない。ただの恥ずかしがりや」

 恥ずかしがりや、というのは正確には当てはまらないと思う。僕はただ、淋しいだけなのだ。
 誰かに僕を知って欲しいが、僕には何もない。何の取り柄もないから、あらゆることに自信が持てない。そしてますますお酒を飲んで、やがて誰にも相手にされなくなる。その淋しさを、さらにお酒でごまかしている。
 僕は逃げることだけを覚えた、ただの子供だ。
 僕は何をやってるんだろう。

 今朝は気温が上がらず、みんな寒い寒いと口を揃える。桜の花びらは冷たい風で飛び散ってしまい、かろうじて枝に残っているだけだ。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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