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2014-06-25 14:00 | カテゴリ:病棟の人々

 まとまった雨こそ降らないものの、曇天が続く。今日は夕方から植中さんたちと自助グループへ参加の予定だが、夜から40%の確率で雨の予報だ。
 麻友美さんは今日も姿を見せない。昨夜12時頃、詰所にかかってきた電話で掛川看護師が何か言っていた。麻友美さんからだろう。デイルームから詰所の様子が覗える小窓の向こうで、掛川さんが「いいから今日はもう寝なさい。電話くれるなら昼間にしなさい」と厳しい口調で話すのが聞こえ、電話を切ったあとにすぐ、どこかへ連絡を入れていた。


 午前10時からのフレッシュミーティングは、節子さんと僕のほか、カナちゃんという20歳を少し過ぎた女の子が新たに加わり、3人での参加になった。4月からこの病院に入ったという若いソーシャルワーカーの女性と、作業療法士の一宮さんも同席していた。
 カナちゃんは外来で、薬物依存症者を対象とした治療回復プログラムを受けていたが、覚醒剤の使用とアルコール依存が見られることから、身体から薬物とお酒を抜くための2週間の短期入院となった。とはいえ、一見どこにでもいるような、今どきの普通の女の子だ。
 僕のフレッシュミーティングは今回が最後ということで、進行役の沼畑看護師長の出した『回復に向けて』というテーマについて、余すことなく喋った。入院後ひと月のあいだに感じたこと、現状の不安、1クールを終えた段階で自分がどうなっていたいのか。そのために、残りの時間で取り組むべきことは何なのか。この数日、各ミーティングの場や個々の看護師さんに直接話したことと違いはない。

 カナちゃんが意見を求められ、遠慮がちながらもはっきりと答えた。
「サトウさんは、とても感受性の強い人なんだと思います。私も人前に出たりとか集団が苦手なので、自分の中に引き籠ってしまうんです。それでクスリやお酒がやめられなくなってしまったんですが、今回は先生以外にも、マトリックスで知り合った患者さんたちに勧められて入院することになりました。そういう人たちに応えるためにも、しっかりやめられるようにしていきたいです」
 初めて会った女の子に面と向かって「感受性の強い人」と言われ、なんだか恥ずかしくなってしまい、別に褒められているわけでもないのに「ありがとうございます」などとお礼を言ってしまった。

 マトリックスというのは『マトリックスモデル』という、外来治療を基本とした依存症治療プログラムのことで、アメリカで開発されたものらしい。柏ノ丘病院では薬物依存症の外来患者に取り入れられている。ワークブック形式の専用テキストを使って行う長期間の学習会みたいなもので、基本的に外来患者を対象としているが、康平くんのような入院患者も、入院中はもとより退院後も参加が必要とされている。毎週火曜日に行われていて、今週月曜に退院した丸谷さんも、翌日には顔を見せていたそうだ。

 節子さんは困ったことに、テーマに逆行して「1年でも2年でもここに居たい」と心境を吐露した。
 スナックをやりながらシングルマザーとして息子さんを育て、その後は調理師として働いていたが、息子さんが独立して疎遠になると、いわゆる『空(から)の巣症候群』と呼ばれる、虚無感や孤独感に襲われる状態に陥ってしまった。過剰飲酒で倒れ、一時は意識不明となって生死の境を彷徨ったという。スナック時代からお酒を飲むことはあったが、自身がアルコール依存症だとは当初なかなか認められなかったそうだ。
 そんな節子さんだが、現在は病院にいるほうが居心地がよくなってしまった。家に戻っても淋しいだけだが、入院している限りは話し相手もいるし、お酒も飲まずにいられる。5ーB病棟は閉鎖病棟ではないので自由度が高く、外出も可能だ。和代さんほどではないにしても、病院依存の傾向が強いのではないか。
 沼畑師長が言うには、こうした患者の場合、退院後の生活をどうするかということにフォーカスを当てていかなければならないという。そうしないと退院後にまた入院を望んで飲酒に走り、同じことを繰り返すからだ。
 
 節子さんが調理師の腕を振るう料理グループは、来週の回を最後に康平くんが退院するなど、メンバーがいなくなるという危機的状態を迎えている。前回見学に行って強く後悔した僕には抵抗があるが、リベンジしたい気持ちもあった。康平くんから誘われていたこともあり、とりあえず来週の回には買い物も含め、再度見学させてもらうことにした。そのうえで、やっぱりダメだと思ったらやめればいい。カナちゃんも、予定通りの入院なら1度きりの機会しかないが、料理に参加したいと手を挙げた。


 最後のフレッシュミーティングは、予定を10分ほど過ぎて終わった。これまでは木曜10時半からのレクと時間が30分重なっていたが、来週からはフルタイムでレクに参加できる。カナちゃんが様子を見てみたいと言うので、体育館へ案内した。3週間前、麻友美さんがまだ慣れない僕を引っ張っていってくれたことを思い出した。
 既にレク終了10分前になっていたため、今日はエアロバイクはできなかったが、福井さんに勧められて名前の分からないエクササイズマシンを試してみた。左右にスライドするペダルに両足を乗せて、立ったままの姿勢で脚を開閉する運動器具だ。
「これ50回やったらたいすたもンだァ」
 と、福井さんいち押しのマシンは、太腿内側とふくらはぎに確かに効く。次はこれもセットで筋トレに励んでもいいかな、と思った。


 森岡先生の回診では、自助グループへ出かけていくにあたって緊張や不安が増すことを訴えた。一昨日、夕食後の薬を飲み忘れて院外AAに行ったことは言わなかった。
 先生はジアゼパムをもう1錠、必要に応じて服用することを許可してくれた。

 回診後、デイルームで植中さんと夕方の出発時刻の確認をしていると、いきなり麻友美さんが現れた。点滴スタンドを横に立てた『点滴ロッカー』状態だ。細い腕に刺さって、だらんと伸びた管がなんだか痛々しい。
 彼女は取り繕うような笑顔で、
「迷惑かけてすいませんでした。今日退院することになったんで」
 と、早口に言った。
「そりゃまあ、お早い退院で!」
 こうなることを予想していたのか、植中さんはからかうように笑ったが、僕はまったくの予想外で、しかも突然の展開に何と声を返していいか分からず「そうなんだ…」としか言えなかった。麻友美さんはそれ以上は何も言わずに、喫煙室へ入って行った。

 僕は今朝洗濯しておいた、彼女のハンカチを取りにベッドへ戻り、喫煙室で点滴スタンドを邪魔臭そうにしながらタバコを吸っている麻友美さんに返しに行った。小洒落た輸入雑貨店に置いてそうな50㎝四方の木綿のハンカチで、刀剣のようなものを持った壁画調の男女がデザインされ「MADE IN INDIA」とプリントしてある。
「あー、それあげる。緊張すんでしょ? 自助行ったら。うははは」
 彼女は相変わらず早口で素っ気なく言い放ち、自分で笑った。そして小さく「でも私のなんか要らないか」と呟いた。僕はいったん彼女の膝の上に乗せて返したハンカチをもう一度手に取って、「ありがとう」とだけ言った。
 彼女はタバコを揉み消すと、よっこらせとばかりに立ち上がり、点滴スタンドをガラガラやりながら喫煙室を出て行き、そのまま隣の冷蔵庫にストックしてあった自分用の飲み物やら何やらを処分し始めた。その様子を喫煙室のガラス越しに見つめながら、僕はタバコに火をつけた。

 一昨日のあの日から、いったいどんなやり取りがあってこういう結論になってしまったのかは、僕が詮索する問題ではない。ただ、再入院とはいえ僕より1週間ほど早くここへ来た麻友美さんは、今度こそお酒を断つという明確な意思を持っているように僕には映っていた。お酒をやめる意思が本当にあるのか疑問に思う患者も、ここにはたくさんやって来る。その中で、1クール終了を待たずに彼女がここを去ることが残念でならなかった。と同時に、僕は取るに足らない患者のひとりに過ぎず、単なる自己満足と分かっていても、何の力にもなれないことを痛感した。
 ただの同情からくる患者の寄り合いは自助グループの集まりとは違う。自分の問題を克服する術を何も知らない者が他者に共鳴しても、かえって傷口を広げるだけだ。だから植中さんのように、笑って答えるしかないのだ。「何やってんだろうね、オマエは」と笑い飛ばして見送るしかないのだ。
 僕は入院こそ初めてだが、彼女と同じだ。ほかのどの患者とも同じだ。失敗を繰り返し続けているから、僕らはここにいるのだ。


 今日の自助グループは、午後6時45分から南町のカトリック教会で行われるAA「オオタカ」に参加する。僕が最初に救急車で運ばれた、あの丸い顔の先生のいる病院のすぐ斜め向かいだ。
 前回と同じ5時40分の病院バスに乗るのだが、途中のスーパー柏ノ丘店前で下車して、そこから徒歩で向かうという。一緒に行くのは植中さんのほかに利根川さんと、院外自助への参加は初めての勝瀬さんだ。
 歯茎の痛みのせいで食事に時間がかかる僕は、午後5時に早出しされる夕食までに、外出の準備を済ませておかなければならない。シャワーを浴びて洗面所へ出ると、ガラガラと点滴スタンドのキャスターの音を響かせて、麻友美さんがやって来た。どうにも歩行に不便なこの器具は、否が応でも病人ぶりを演出する。
「いやー、ホントごめんね」
 と、彼女はまた僕に詫びた。今日ここで、会う人会う人に同じように言っているのだろう。
「俺に謝らなくていいから。それよりも、ありがとう」
 本心からそう言った。一見荒っぽいようだが、その実細かい気配りで僕の背中を押したり、リードしてくれた彼女には、感謝してもしきれない。
「今日、もう行っちゃうんだね」
 ほかに言葉が思い浮かばず、訊くまでもないことを訊く。
「うん、最後に先生に会ってから。でもさあ、先生まだ来ないんだよねー」
 舌打ちするように言うが、それほど苛立っているようには見えない。彼女のいつもの物言いだ。
 5ーB病棟はすべての患者が任意入院なので、基本的に退院は自由だ。病院内での飲酒など、よほどの問題行為がない限り、強制的に退院させられることはまずない。つまりこの退院は、麻友美さんの意思なのだ。
「じゃあ…もう決めちゃったんだね?」
 僕は彼女に残って欲しかった。だから無駄だと分かっていても、最後に彼女の意思をはっきり確かめたくて訊いてみた。
「ほら、もう荷物まとめちゃったからさ」
 彼女は僕の質問には答えず、そう言ってごまかした。
「ねえ、麻友美さんって歳いくつなの」
「私? 34だけど。サトウさんは?」
「俺、38」
「そうなの? 私と同じくらいか年下だと思ってた。タメ口きいてごめんね、はは」
 全然心の込もっていない謝罪が出て、少しほっとした。


 夕食が来るまで、ベッドで外出の準備をしていると、室戸さんという薬剤師の女性が訪ねて来た。眼鏡にマスク姿なので表情がよく分からないが、喋り方から察すると30代前半~半ばくらいだろうか。
 インフルエンザなどの感染症に敏感な病院では、スタッフがマスクをしているのは当たり前だが、少なくとも5ーB病棟の看護師はそうでもない。これまであまり気にしていなかったが、ポロシャツにジャージかジーンズ、白エプロン姿が一般的で、看護師によってもばらばらだ。沼畑師長などは、STAP細胞があるとかないとかで有名になった例の人よろしく割烹着が定番になっている。ここは精神科病棟で、医療期間というよりむしろグループホームに近い性格のものなのだと改めて感じた。

「サトウさん、今まで飲まれている常備薬はありますか?」
 入院に際して何度も医師や看護師に答えた質問だし、それからひと月経った今、あえて同じことを訊く意味が分からなかったが、素直に「ありません」と答えた。室戸薬剤師は、現在医師より処方されている薬について書かれた『お薬の説明書』と題した写真付きの紙1枚を僕に渡してくれた。

○ジアゼパム 1錠 2㎎ /1日3回 毎食後
○デパケンR 1錠 200㎎ /1日2回 朝・夕食後
○ジアゼパム 1錠 2㎎ /不安時に服用

 説明書によると、ジアゼパムは精神や筋肉の緊張を和らげ、気持ちを落ち着かせて不安を抑える薬で、デパケンRは脳に作用して神経の過剰興奮を鎮める効果があるという。デパケンについては長期服用を続けると、服用をやめたときに不眠症状を起こす場合があるので、1日2回の処方となっているらしい。
 最後の「不安時に服用」とあるジアゼパムは、午前の回診で、自助グループへ参加する際に持って行っていいと言われた分で、必要に応じて飲む頓服薬だ。午前の回診の指示が、薬局の出すこうした説明書にもう反映されているのかと感心したが、よく考えたら「どうしても不安ならお薬出しますから」と前々から言われていた分だ。今日、回診で改めて先生にお願いしなくても、詰所へ足を運べばもともと貰えた薬なのだ。
 ちなみに眠剤については、今僕は飲んでいない。

 室戸薬剤師からは薬の効き目について尋ねられたが、正直効いているのかどうか分からないと答えた。
 僕がアルコールに依存するのは、不安や孤独感、自己否定、対人・対集団の緊張から解放されたいから、と自分では思うが、薬がアルコールの代用になるわけではない。薬剤師に言うことでははないかもしれないが、2ヶ月後に退院してもとの生活に戻ったとき、こうしたココロの問題に正面から取り組んでいけるよう、例えばカウンセリングを受けたりなど、何かしらの対応や訓練をしていきたい、と僕は話した。

 室戸薬剤師は、
「薬を処方するうえでサトウさんの考えを聴くことができて、こちらとしても良かったです。ジアゼパムについては、不安が強いときに追加で服用しても効果が見られないようなら、看護師に言っていただけますか? 私もときどき伺いますから」
 と言ってくれた。
 僕は長話になってしまったことを謝り、既に来ていた夕食を取りにいった。


 急いで夕食を済ませ、薬を飲み、頓服のジアゼパムをもう1錠を受け取ると、バスの時間まであと10分を切っていた。僕は女性専用の55号室の前まで行き、そっと中を覗いてみた。部屋の隅のベッドを覆い隠したカーテンのてっぺんから、点滴の薬液パックがはみ出している。
「麻友美さん、それじゃ行くから」
 と、声をかけた。「ぅあーい」というけだるい返事のあと、カーテンの隙間から麻友美さんが顔を出した。
「ハンカチ持った?」
「うん」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「気をつけてね」
「はーい」
 4歳下の彼女は、最後まで僕の保護者のようだった。


 スーパー柏ノ丘店から歩く。
 この界隈は僕の実家の近所だ。僕の知る限り、ここから南町へ徒歩で行くには結構な時間がかかると思っていたが、実際歩いてみるとそうでもなかった。心配なのは空模様で、帰る頃にはひと雨降り出しそうな雲行きだった。
 教会に着いたのは午後6時15分、ミーティング開始の30分前だった。
 会場となる南町カトリック教会は古い建物だったが、一昨日の19丁目教会よりはずっと教会らしかった。とはいえ、実際にミーティングを行う部屋はただの古びた会議室で、部屋の中にいる限り、ここが教会とは思えない。
 前回は食後の薬を飲んでいなかったこともあり半端ない緊張だったが、今回は薬のおかげか、前回に比べるといくぶん落ち着いていた。ただ、それでも不安は拭えない。隣に座った勝瀬さんも、あからさまに緊張している様子だった。
 ひとり、またひとりと、AAの参加者が集まって来る。みんな楽しげに雑談を交わしているが、場になじめない僕は孤立する。周囲からちらちらとこちらを伺う視線を感じる。意識過剰だというのは分かっている。でも、ミーティングが始まるまでのこの時間が、今の僕にはたまらなく苦痛なのだ。
「これ持っといたほうがいいよ」
 植中さんに言われてテーブルの上を見ると、ビジネス書サイズ程度だろうか、青い表紙の本が4、5冊積まれている。タイトルは『アルコホーリクス・アノニマス』。手に取って開くと、300ページ近くある。
『ビックブック』と呼ばれるこの本は、AAメンバーによって読まれている、プログラムの基本テキストというか、心得指南書というか、とにかくそういう本で、語弊があるがあえて言えば聖書のような、それくらいAAの根幹をなすものだ。院内のAAで貰ったハンドブックに掲載された文章は、このビックブックからの引用になる。

 最終的に、僕らを含めて10~12人くらいが集まりミーティングが始まった。ビックブックの中からひとつのチャプターを拾って読み上げ、その内容に基づいて行われる『ビックブックミーティング』というミーティングで、このグループでは話したい人が挙手をして話すため、指名されることはない。ひとりで何度も手を挙げて話しても構わない。話をせずに聴くことに徹してもいいのだが、自分から参加を申し出た僕にしてみれば、よきところで手を挙げないといけない ―― などと考えてしまい、勝手に焦る。
 いきなり勝瀬さんが、いちばん最初に手を挙げた。先を越された気がしたが、ここで早まってはいけない。しばらく様子を見ることにした。

 院内AAやARPのミーティングで勝瀬さんと何度も同席している僕は、彼の話す内容が一貫していることを知っている。支えてくれる奥さんのためにも、1日でも早くもとの生活に戻りたい。AAが、自分にとってお酒と訣別するための場になるのなら、とにかく何でもいいから参加しなけらばならない。入院以来、院内でのAAにほとんど参加してきた勝瀬さんの正直な気持ちだと思ったが、普段よりも明らかに、緊張で声がうわずっていた。

 その後は、参加者による挙手、発言が続いた。匿名性を重要視しているAAではメンバーが独自の呼び名を持っており、このアノニマス・ネームが大切だという意見や、参加者どうしを「仲間」と呼び合うAAに、自分の意思でお酒をやめられない依存症者が感じる意義のベースは何よりも仲間にある、といった考えが話されたりした。僕も適当なタイミングで手を挙げることに成功し、いつものように簡単な自己紹介から、軽い冗談も交えつつ、いつもと変わらない主旨の話をした。

 僕がこのミーティングで印象的だったのは、「ナホ」さんという進行役の女性の告白だった。現在30代と思われる彼女は、おとなしくて落ち着きのある聡明そうな女性に見え、とてもアルコール依存症とは思えない。驚いたことに、彼女はアルコールに依存しながら、かつて精神科の看護師をしていたという。「酒の臭いがする看護師がいる」と病院へ投書されるほどで、挙げ句には投薬や患者を取り違えたりと、あってはならないミスを繰り返し、言い訳のできない支障をきたしてしまったそうだ。
 彼女は当時、看護師という激務の中でアルコール漬けになりながら、どんな思いで患者と接していたのだろうか。

 もうひとり、長期にわたって断酒を続けている「カイ」さんという60代前半くらいの男性の一言が、心に残った。
「どうせ酒をやめなきゃならないなら、笑ってやめようと思いました」
 僕の本心を見透かされているようだった。僕が断酒に際して笑うとか笑わないとかいう話ではない。
 ぼくはそもそも、そこまで決断できているのだろうか。本気でお酒をやめる気があるのだろうか。

 徒歩での帰り道、心配していた雨は降らなかった。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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