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2014-06-10 13:05 | カテゴリ:院内生活

 こどもの日。陽射しは比較的暖かいものの風はまだ冷たく、春の陽気の訪れはもう少し先になりそうだ。

 朝食後の薬を飲みに詰所へ行くと、看護師の石橋さんに声をかけられた。
「サトウさん、最近ずいぶん話せるようになったよねえ」
 もちろん善かれと思って僕に言ってくれる、ポジティブな見立てというか感想というか、とにかくそういうあれだ。
 石橋看護師は僕より少し上、40代前半の男性で、介護施設の福祉士やデイサービスのヘルパーさんにありそうな、何だかとても距離が近い感じの、少し中性的な喋り方をする。
「最初の頃に比べるとさあ、安心したよ。うん」
 僕はちっとも安心していない。不安感や孤独感は相変わらず僕にまとわりついているのだが、詰所へ相談に行くのは気が引けて、どんどん足が遠のいていく。
 先日いちど、思いきって詰所を訪ねてみたが、忙しげな中の様子に足がすくんで、結局そのままベッドへ戻った。僕に気付いた葉山看護師が心配して様子を見に来てくれたのだが、僕は「大丈夫です」と何も言えずに追い返してしまった。
 そんなこともあり、今度は成り行きに任せて「言えない」ということを言ってみた。しかしまあ当然なのだが、なかなか要領を得ない。

 僕の「言えない」は「言いたくない」という意味ではない。強いて例えれば、タクシー乗り場で順番待ちをしていても、常に最後尾に居続けようとするような感覚か。決して積極的に後ろの人に順番を譲っているわけではなく、ただ何かに後ろめたさを感じて前に進めないのだ。
 そんな調子だから結局僕はタクシーに乗れず、いつまで経っても目的地へは辿り着けない。
 石橋看護師は、僕が思った通り「いつでも、どんなことでも相談に来てくださいね」と答えてくれた。ここへ入院して、どの看護師さんからもかけてもらった優しい言葉だ。
 僕は彼らに、ほかに何と言わせたいのだろう。


 今日の昼食には『こどもの日』とプリントされたカップデザートがついていた。アイスクリームだと思うが、食べずに共用冷蔵庫の冷凍室に取り置きしてある。鯉のぼりのイラストが書かれた名刺大のカードもトレーに載っていたが、正確にはカードというよりただの紙切れなので用途が分からない。みんな躊躇なくゴミと一緒に捨てていたが、僕は何だか忍びないので、とりあえずベッドの枕元のパイプにテープで貼っておくことにした。
 こどもの日。れっきとした大人なのに、自分の生き方をコントロールできなくなったオトナ子供が、ここにはたくさんいる。


 昼食後の睡魔は尋常でなく、僕は今日も昼寝をしてしまい、散歩にも行かず外へ出ることはなかった。祝日のため学習会もなく、取り立てて何もない一日がこうして過ぎた。

 明日は一日外出の申請をしていたが、キャンセルした。実家には2時間散歩で顔を出せることが分かったし、ほかに行くところもない。そうでなくても、僕は毎日がゴールデンウィークみたいなものなのだから、何も連休最終日の外出にこだわる必要なんてないのだ。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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