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2014-05-31 23:20 | カテゴリ:外出・散歩

 昨日の夕方、両親が着替えを持って来てくれた。実家の部屋のクローゼットに眠っていたせいか何となくカビ臭かったので、午前中にそれらをまとめて洗濯した。
 入院してアルコールを断ってから、僕は人並みの清潔感をいくらか取り戻したような気がする。4年前に16年ぶりの実家暮らしに戻って以来、洗濯こそ母に頼んでいるが、シャワーを浴びることも、顔を洗うことも、歯を磨くことも面倒になっていた。
 お酒を飲んで酔っ払うと、身の回りのことすべてが億劫になる。部屋は散らかり放題で、ベッドの上の汚れた布団にくるまって寝ていた毎日。退院して新しい生活を迎えたとき、極めて当たり前で健全な、フツーの人のフツーの習慣を、僕は身につけているだろうか。


 午後3時。病院に隣接する柏山へ散歩に出た。正規のルートから入ると、いったん坂を下ってかなりの迂回をすることになるので、病院裏の敷地内から舗装されていない細い山道、というか獣道を登っていく。すぐに山中の遊歩道に出るので、そこから山の展望広場を目指すわけだが、時間はあるのでわざと遠回りしてみた。
 遊歩道があるとはいえ、高い樹木が生い茂る立派な山なので、登り下りの勾配はなかなかの運動になる。途中のベンチで高校生のカップルだろうか、男の子が女の子にギターを弾いて聴かせている光景に遭遇した。大きなお世話だが、純朴そうな彼らが将来僕みたいな依存症にならないことを切に願いつつ、歩みを進める。
 やがて山の中腹と思われるあたりまで歩いたところで、山小屋ふうの休憩施設に出た。
 すぐ真下が完全整備された広い駐車場になっていて、日曜日だけに親子連れの姿が行き交っている。そこから斜面に沿って造られた階段を上れば、ここまで一直線に来られるような設計だ。綺麗で整ってはいるけれど、人工的な感じは否めない。
 そう思いながらふと斜面に目をやると、一面にツクシが生い茂っていた。足場の悪い急斜面に無理な体勢でへばりつき、ビニール袋を片手にツクシを摘んでいる夫婦らしき中年の男女もいる。
 ―― ツクシなんて、何年ぶりに見ただろう。というより、何年ぶりにツクシを意識しただろうか。
 風に吹かれて小刻みに揺れるその小さな頭を、指でそっと撫でてみた。

 さらに 300mほど歩いて行くと、時計塔と鐘のオブジェが建つ展望広場へ出た。この広場自体が緩やかな斜面で、等高線のような段々状になっていて、階下には噴水があり、子供たちがはしゃいでいる。
 その先には、この街の中心部から隣町まで一望できる景色が広がっていた。

 既に陽は少し傾いていたが、日曜の午後を閑かに過ごす人は多かった。
 サッカーのパス練習や縄跳びで遊ぶ親子連れ、手をつないで仲睦まじくデートするカップル、ウォーキングを兼ねて犬の散歩をする夫婦。みんな幸福そうに見えて、自分だけがひとり、ぽつんと置いて行かれているような気持ちになる。
 僕の心は卑屈で、歪んだままだ。


 淋しくなってきたので、早めに切り上げて病院へ戻った。あの展望広場からの景色や、そこに集う人たちを見て、僕が本当に穏やかで微笑ましい気持ちになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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【ジャンル】:心と身体 【テーマ】:禁酒
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