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2015-02-18 12:37 | カテゴリ:レクリエーション
(※5度目のスリップから13日目)
 午前中から51号室の山形さんが、髪を切りたいと米窪さんを訪ねて来た。米窪さんが先日バリカンを買ったのを聞いてのことだ。山形さんはそれを使って自分で刈るという。だけど僕に言わせれば、山形さんは今現在立派な坊主頭で、切るも切らないもないように思うのだが、本人曰く「髪が伸びた」そうだ。この人は夏休みの出店で焼きそばでも売っていそうな風貌もさることながら、素行がとてもユニークで、特に以前の入院時から付き合いのある高津さんとの会話は、まるで兄貴と舎弟だ。
 先日も、喫煙室でタバコを吸っている高津さんのもとへ一目散に駆け込んで来たかと思えば、嬉々とした表情で、
「高津さん! オレ、入院20回じゃなかったッス、19回でした!」
 とどうでもいい報告をして、高津さんに、
「まあ、あんまり自慢にはならんなァ」
 と一蹴されていた。そして今日も、米窪さんからバリカンを借りた山形さんに高津さんが割り込み、
「オレが刈っちゃるけん。やらしてくれ」
 と強引に連れ出して行った。

 しばらくして山形さんは、ほぼスキンヘッドになって戻って来た。


 昼食後、午後1時半からのレクでは再びミニバレーに参加した。先週の筋肉痛はほとんど消えていた。今日は優二さん、利根川さん、山形さんのチームに入り、草刈さん、町坂さん、植中さん、そして本来バレーなんかしてはいけないはずの米窪さんのチームと4対4でゲームをした。
 途中で須藤さんと看護師さんがひとり加わって5人対5人になり、5ゲームくらいしただろうか。スコアは忘れてしまったが、僕らが勝った。というより、最終的な勝敗なんかはどうでもいいのだ。
 まだ探り探りだが、僕は確実にレクを楽しんだ。


 夕食前に病室を訪ねて来た一宮OTから、バレーに参加したことをねぎらわれた。なんだかとても照れ臭かった。
 一宮さんは今日のレクに姿を見せなかった黒部さんに声をかけていた。相変わらず気配りを欠かさない人だ。次回の料理のほうでは、作業療法士の研修生がひとり参加したいと言っているという。もちろん大歓迎だ。
 もうひとつ、なんでも来月11日に病院で夏祭りがあるらしい。沖縄三線の演奏や盆踊りがあるそうだ。僕は興味を持ったが、ビールが欲しくなりそうなイベントだ。お酒なしで盛り上がるのだろうか。


 今日も早出しの夕食のあと、院外AAへ向かった。当初は利根川さんと南町教会の「ヒナドリ」へ行くつもりだったが、利根川さんが急遽体調不良を訴えて休むことになったため、迷った末、西町19丁目教会の「つぐみ」へ行くことにした。こちらは優二さん、山形さん、関根さんらと一緒だ。
「つぐみ」は1ヶ月前、僕が初めて院外自助に参加したグループで、それ以来足を運んではいない。頓服のジアゼパムを飲んで出かけて行った。
 会場には10数名が集まり、他のAAで見知った方も来ていたが、それでもまだ2回目のグループということもあって僕は落ち着かず、会場に着いて早々2錠目のジアゼパムを飲んだ。そのせいか、ミーティングが始まると途端に眠気に襲われ、半分くらいは落ちていたようだ。

 慣れることで油断するのは禁物だが、僕には今、この病院でのARPを楽しんでいる実感がある。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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2015-02-13 12:25 | カテゴリ:レクリエーション
(※5度目のスリップから8日目)
 昨夜からまた、歯茎が腫れて痛みだした。実家から持って来て冷凍しておいた保冷剤を当てて寝たが、朝になっても痛みは治まらず、ラジオ体操どころではない。詰所で夜勤明けの前上看護師にお願いしてロキソニンを貰い、朝食に挑む。ついでに久しぶりに血を採られた。定期的な採血だ。
 今日の朝食はレンコンの金平とマグロの甘煮。よりによってレンコン。小動物のように前歯で噛みしだき、時間をかけて食べる。この病院の食事は基本的に美味しいのだが、ときどき今日のような「酒のつまみ」を思わせるおかずがかくも挑発的に登場する。僕ら患者はそのおかずを白ごはんと共に、複雑な思いで食べなければならないのだ。

 午前の渡辺先生の回診は10時を回ってから始まったが、月曜にスリップ告白の件で話をしていることもあり、僕は比較的早くに終わった。退院の近い勝瀬さんや米窪さんも、僕と同じく森岡先生から渡辺先生に主治医が変わった患者だ。僕の診察が終わっても、勝瀬さんは「いろいろ相談もあって長くなるだろうから、俺は最後でいいよ」と、デイルームで吾妻ひでおの漫画『アル中病棟』を熱心に読みふけっていた。これは森岡先生が奨めてくれていた、アル中漫画家の入院体験記だ。


 11時半を少し過ぎたが、今日こそとの思いで体育館へ向かう。バレーコートには、丹羽看護師を含めた計7人しかおらず、ちょうどいい具合だ。草刈さんや町坂さんに声をかけられたが、例え前回のように誘いがなくても自分から行くつもりだった。いよいよ初のミニバレーだ。
 僕は草刈さん、町坂さん、植中さんとのチーム、対するは優二さんや小千谷さん、丹羽看護師らのチームだ。ミニバレー用の大きなボールは想像以上に軽く、僕のプレーは決して上手いとはいえなかったが、それなりにレシーブで動き、跳びはね、汗をかいた。3ゲーム、1ー2で敗れたものの、楽しかった。
 何よりも、レク終了後に喫煙室で、みんなとの雑談に加わることができたのが喜びだった。草刈さんには「ナイスファイト」、優二さんからは「次からは欠かせないね」と声をかけてもらったのも嬉しかった。ただそれだけのことだが、僕にとっては価値のある時間だった。


 午後、勝瀬さんと米窪さんの3人で買い物へ出た。病院バスの時間を逃したので、歩いて駅前のショッピングモールへ行き、帰りにスーパー柏ノ丘店へ寄るというコースだ。途中、この週末に再度実家へ一時外泊することを父へ連絡した。父は「うん」とだけ言って了承した。
 駅前のショッピングモールでは、100円ショップで米窪さんから木製クラフトを買うことを勧められた。型を抜いて組み立てる、子供向けの工作キットだ。動物やら乗り物やらいくつかの種類がある。米窪さんは以前この木製クラフトのうち、ティラノサウルス的な恐竜を作っていた。型のサイズがアバウトで、パーツが合わずうまく組み立てられないとぼやいていたが、出来上がったそれは 100円にしてはなかなかのものだった。暇潰しにはちょうどいいかもしれないと思い、僕は比較的簡単そうなものをふたつ、イルカと飛行機のキットを買ってみた。
 店内にいるうち、何だかお腹の調子が悪くなり、猛烈な眠気に襲われ始めた。薬のせいだろうか。今日は朝食と夕食のそれぞれ1時間前にロキソニンを1錠ずつ、朝食後にエビリファイを1錠飲んでいる。エビリファイを飲み始めてから、眠気のほか若干お腹のゆるみは感じていた。ロキソニンを頓服で飲んでいることは、渡辺先生にちゃんと伝わっているのだろうか。それとも薬に関係なく、毎晩ベッドに入るのが遅いため、単に寝不足なだけなのだろうか。
 今日は午後4時からカウンセリングがある。ショッピングモールを出る前に、既に3時を過ぎていたので、僕はスーパー柏ノ丘店には寄らず、ひとりで先に病院へ戻ることにした。なんとか4時直前に病院へ着いたが、病棟の詰所には既に田村心理士が来ていて、おそらく僕のであろう、カルテファイルに目を通していた。
 今日は院内AAが先方の都合で中止になり、僕は南町教会の「オオタカ」へ行くつもりで申請をしていたが、キャンセルすることにした。だからこのカウンセリングが、今日僕がやるべき最後のことになる。


 3階の、いつもの心理面接室で、2回目のカウンセリングが始まった。僕はまず、火曜日のレクでの失敗と、今日ミニバレーに参加できたこと、ベッドサイドのカーテンを開けることにも特に問題はなかったことを報告した。ただこれは、カウンセリングという時間をつくってもらい、課題を見つけて背中を押してもらったからこそできたことだ。カーテンの件にしても、「カーテンを開ける」という物理的な行為に問題はなかったが、僕の心の中では依然カーテンを閉ざそうとするという問題がある。あくまで、今のところ行動としてクリアできたということに過ぎないのだ。
 僕は先日の部屋ミーティングで車の話題になったときに感じたことを話し、それから、僕が再度スリップを繰り返した経緯と、自分から牛本主任に申告した理由についても話をした。

 途中、「そうなんですか?」と相槌を打ちながら話を聴いてくれた田村心理士が、僕に言った。
「サトウさんは、具体的な課題として挙げたバレーとカーテンの件を行動に移しましたが、それは自分から集団に関わっていくための手段ですよね? 続けていくことにも意味はあると思いますが、バレーとカーテン、どっちを続けますか?」
 先週と同じように少し意地悪そうに訊ねられたが、僕は迷わず「両方」と答えた。
「分かりました。私がサトウさんの話を聴いて思うのは、ご自身で課題をつくって意識的に取り組んでいるのに、バレーでは私が背中を押したから、とか、カーテンの件では心の闇について仰ったり、ご自身の努力をご自身で認めないように聞こえます。どうしてなんでしょうか」
「それはたぶん…自分に自信がないことと、失敗が怖いからだと思います。次にバレーをしたときには嫌なことが起きるかもしれないし、スリップを繰り返したように、些細なことで傷ついて、またすぐにカーテンを閉ざしてしまうかもしれません。それが怖くて、やっぱり次から次へと予防線を引いておくというのか…。もっと図太くなれればいいんですけど」
 指摘されたことはその通りだ。僕は思ったことを正直に言った。
「その割には、なかなか図太いことをされてますよね。スリップにしても大胆ですし、あれだけ悩んでいても、バレーやカーテンの件をいきなり行動に移してしまうし。サトウさんの中に、まったく正反対の面が隣り合わせになっているように思います」
 振り返って、自身でも大胆不敵だったと思うことはある。縁もゆかりもない大阪の大学を受験することを選んだり、そもそもこんな自分が芝居をやっていたことが、大胆極まりない。
「それと、集団では話せないと仰りながら、今はこうやってちゃんと話をされている…というより、話が止まらなくなるくらいですよね。ここにも正反対の面を感じるんですが」
「それは…」
 僕には思い当たることがある。
「自己顕示欲っていうんですか、『自分を見て』っていう思いが強いんだと思います。1対1でこうして話していると、否が応でも僕を見てくれますが、集団になると自分の存在がぼやけてしまうっていうか。ある部分について、僕よりはるかに高い能力を持った人がいれば、『自分を見て』が通じなくなるので、自分から土俵を降りてしまうんです。自分でカーテンを閉じて距離を置く。そういう自分がとても嫌になります」
 僕のこの精神構造は、歪んだコンプレックスが強く関係している。
「なるほど。それでまた、自己否定に向かってしまうんですね」
「だと思います」
「先日、今日の日程をお伝えに病室へお邪魔したとき、カーテンが開いてるのに気づきました。バレーにしてもそうですが、サトウさんが現状を変えようと努力されているのを、私はそれなりに理解しているつもりです。次は、バレーに参加したりカーテンを開けるという『手段を続ける』ことで何を感じるか、その辺りを聴かせてもらえますか?」

 僕がバレーに参加できたことで、先週挙げられた「料理とバレーの違い」については話に上らなかった。実際、僕はすっかりそのことを忘れていた。
 次のレクでもバレーに参加し、カーテンを開け続けること。失敗したと感じたときに、何が見えてくるのだろうか。

 終了間際に、カウンセリングとは直接関係ないが気になっていた質問をしてみた。
「田村さんは、いまどのくらい患者さんを受け持っているんですか?」
 守秘義務に当たるのだろうか。具体的な人数については回答を避けられてしまった。
「さあ…数えたことがありませんから。でも、ドクターが担当される患者さんの数には及びませんよ」


 夜、病室で勝瀬さんから訊ねられた。
「カウンセリングって、1回どのくらいの時間でやるの?」
「週1回で、50分です。だいたいいつも5分くらい押しますけど」
「俺も今、カウンセリング受けたいよ」
 と、米窪さんが割り込んできた。米窪さんはついさっきまで、奥さんと電話で長いこと話をしていた。
 退院が近づくと、家族を交えて病院側と面談が行われる。勝瀬さんも米窪さんも、近々その面談が予定されている。患者サイドとして、自分の意向と家族の意向にズレがないよう、前もって話し合う必要がある。他愛のない話やふざけた話をする中でも、最近ふたりがナーバスになっているのをとても感じている。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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2014-07-26 01:38 | カテゴリ:レクリエーション
(※スリップから14日目)
 米窪さんが早朝から、昨日買ったバリカンで勝瀬さんに髪を切ってもらったそうだ。院内でやると怒られるので、4階玄関から外に出た、福井さんたちがラジオ体操をしている横で、勝手に電源を取って散髪していたらしい。4階玄関前でやろうが看護師さんに見つかれば、こっぴどく怒られるに決まってると思うのだが、いかがなものか。
 僕はラジオ体操にも参加せず、ベッドで爆睡していた。米窪さんから、僕も勝瀬さんに髪を切ってもらうよう勧められたが、プロの美容師にお願いするのは気がひけた。いっそこのまま退院まで、髪もヒゲも伸ばしつづけたほうが「病んでる感」が増していいかもしれない。
 午前7時頃にベッドから起きて、タバコを吸い、喫煙室を出たところで瞑想タイムが始まった。成りゆきではあるけるれど、入院して初めて、廊下ではなくデイルームでの瞑想参加となった。

 1年近くこの病院で寝起きし、現住所も病院としていた峰口さんが、今日退院した。しばらくはデイケアなどで来ることはあるそうだが、
「再入院ですぐに戻って来たらみっともないから、あまり格好いいことは言わない」
 とだけ言い残して病院をあとにした。
 昨晩、峰口さんは長かった入院生活最後の夜を、遅くまで自助グループの会場調べに費やしていたが、そのままデイルームで寝てしまい、夜勤当番の掛川看護師から病室へ戻って休むよう声をかけられていた。
 峰口さんは50代前半~半ばくらいで、あまり身の上を話さない。奥さんとは離婚したと、院内のAAミーティングでいちど聞いたくらいだ。以前どんな仕事をしていたのかも、雪絵さんとはどういう関係で今どうなっているのかも知らないが、1年も病院で暮らしたあとの社会復帰が相当に大変なのは想像にかたくない。なにより、いちばん不安なのは峰口さん本人のはずだ。
 消灯したデイルームで、眠剤が効いたせいなのか疲れなのか、昼間のいたずらっ子のような表情とはまるでかけ離れた様子で、椅子に座ってうなだれたまま静かに眠る峰口さんが、なんだかひどく孤独に見えた。


 火曜日午後のレクは、今日から看護実習に来たふたりの学生さんも交えて、例によってミニバレーで盛り上がっていた。僕は僕でやっぱりエアロバイクを漕いでいたが、いつもと違うマシンで負荷がかからず、あまり汗をかけなかった。バレー禁止の米窪さんは、黒部さんや一宮OTと卓球でそれなりに楽しそうにはしていたが、思いきり身体を動かせないストレスは多少なりとも感じているようだ。内科への不信感を口にした米窪さんを知っている僕には、なんだかそう見えて仕方がない。

 レクの合間に、昨日の学習会で感じた回復のステップについての疑問を、一宮さんに尋ねてみた。
「学習会で示したステップはあくまで一例です。患者さんの環境によっては、第Ⅱ期とⅢ期を同時進行していくことも可能だと思いますよ」
 一宮さんはそう言ったが、対人関係の問題について、ひとりで解決することは容易ではない。僕は退院後、お酒と距離を置くうえで父や母、特に父とどう向き合っていけばいいのだろう。
「院外の自助グループで、そういうお話をされましたか? 共通した悩みや経験を持った方もいらっしゃるかもしれませんよ」
 とても簡単には見つからない答えを、患者の立場になって一緒に探そうとしてくれる一宮さんの気遣いが、嬉しかった。
 これは僕の病気だ。米窪さんは「みんな所詮、仕事でやってるんだ」と言っていた。確かにそうかもしれない。でも、たくさんの人の支えなしではここにはいられないのも事実だ。1クール終了までの残された時間の中で、僕は進んで助けをを請いたい。そのためには、僕自身の努力も必要だ。


 今日は院外のAAにも行かず、散歩もせず、病棟で過ごした。院外のAAはまだまだ植中さんにくっついて行くのが精一杯だから、植中さんがAAを休むときは僕も休むという状態だ。おまけに火曜日は院内のAAミーティングもないため、今日はレクリエーションだけの一日となった。
 パニック障害のため、このところ精神的に落ち込みが激しく、昨日のAA「カッコー」のミーティング参加も直前で取り止めた利根川さんは、あまり気分が乗らないと言いながらも、自らが入所する中間施設が運営するAAグループのミーティングへ出かけて行った。転院先から戻っても体調が芳しくない米窪さんは、内科のドクターから許可がでればぜひ足を運びたいと言っている。そろそろ僕も、自分で判断して動かないといけない。


 女性病室の55号室へ担当が移った細池看護師に代わり、6階病棟から丹羽さんという女性看護師が新たに53号室の担当となった。
 丹羽さんは50代前半くらいの、かなりハキハキした感じの看護師さんで、「なんでも病棟」と呼ばれる6階でもさくさく仕事をしていた様子が想像できる。声も大きく、患者と接するときにはまるで子供に言い聞かせるような話しかたになるのが特徴だ。
 ともあれ今日から、53号室の部屋担当は牛本主任、掛川看護師、前上看護師、丹羽看護師の4人となった。といっても、患者は何かあれば部屋担当など気にせずその日出勤の看護師さんに遠慮なく声をかけるので、部屋担当がどうこうというのは僕らにはまるで関係がないことなのだが。

 明日の午前中は勝瀬さんが、今日から看護実習についた学生さんを連れて、柏山へ散歩に出るそうだ。米窪さんもちゃっかりついて行くようだが、僕は10時からセカンドミーティングがあるため、午前中は外出できない。
 勝瀬さんについた実習生は、学生といっても30代前半の既婚女性で、お子さんもいるそうだ。僕が見立てた「実習生がつく患者の条件」は20代前半の独身女子という、一般的な看護学生を前提にしているため、この条件から外れている勝瀬さんが今回対象患者となったのも頷ける。
 それにしても、子育てをしながら看護師を目指して勉強する学生さんの姿は、半ば人生を諦めてアルコール依存者となった僕にはとても神々しく、光輝いて見えた。
 アルコール病棟は決して掃き溜めではない。患者にせよ病院スタッフにせよ実習生にせよ、ここでは様々な人が行き交い、様々な色を放って見せている。

 今日は30℃を越えたそうだ。病棟のあちこちで扇風機が回りだした。みんな口を開けば「暑い」を連呼するが、湿度が低い分、大阪の夏に慣れた僕にはまだまだ快適だ。


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