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2015-03-18 13:22 | カテゴリ:学習会
(※断酒26日目/退院まであと17日)
 スマートホンのマイクロSDカードを壊してしまったので、保存してある写真データをすべて失ってしまった。新たに保存することもできないので、午前中に実家へ一時帰宅して部屋を探してみた。まさかとは思ったが、やっぱり予備のものなんてなかった。仕方がないのでそのまま徒歩でスーパー柏ノ丘店まで行き、いちばん現行のものに近い2GBのカードを買って病院に戻った。


 2時からの学習会はいよいよ今日が11回目となる。僕の退院までにはまだ1回あるが、入院して最初の学習会からこれで一周、1クールの最後ということになる。
 日程表のタイトルは『⑤ アルコールがつくる心の病気 ~その1~』。先月9日の学習会に続いて病院長が担当する。プリントとスライドでのレクチャーだが、冒頭、院長が「私の好きな文言」として以下の言葉を示した。

 初め人 酒を飲み やがて酒 酒を飲み ついには酒 人を呑む

 飲酒のコントロールを失い、お酒を飲むことで更なる飲酒を招いて、やがてお酒に呑まれてしまう。アルコールの危険を言い得た文言で、まさしく僕らのことだ。
 次に院長はスライドを使い、お酒の問題を抱えていたとされる著名人を挙げた。


○美空ひばり
 言わずと知れた国民的歌手の人。1989年に52歳で死去。死因については憶測が飛び交うが、重度の慢性肝炎と『大腿骨頭壊死症』という病気にかかっていたとう。これはアルコールが要因のひとつと考えられ、大腿骨への血流が妨げられて股関節の機能が失われる病気なのだそうだ。院長の意見では、美空ひばりはアルコール依存症が疑われる、との話だ。

○藤沢秀行
 棋聖戦6連覇を成し遂げた囲碁棋士の人。本人曰く「大一番の前には酒を断ち、そのときに現れた化け物に打ち勝つことで、七番勝負に勝つ」。言ってることは完全にアル中の離脱症状だが、結果を出しただけに名言扱いされる。2009年、83歳没。

○寛仁親王
「ヒゲの殿下」で有名。メディアでは三笠宮とも報道される。皇族でありながらアルコール依存症の診断を受けたことを自ら発表、なんとAAにも通ったという。2012年、多臓器不全のため66歳で薨去。院長の話では、ご本人もさることながら「主治医が凄い」。

○エリザベス・テイラー
 英国生まれ、紫色の瞳を持つ美人女優としてハリウッドで活躍した人。8回の結婚と7回の離婚を経験したことでも知られる。2011年に79歳没。アルコール依存症と処方薬乱用のほか、様々な健康問題を抱えていたというけれど、その割に長生きしているなあ、とは思う。

○林葉直子
 元女流棋士。90年代に不倫やら失踪やらヘアヌードやらで世間を騒がせた人。その後自己破産。今年になって、8年前から重度の肝硬変であることをテレビ番組で公表した。46歳とは思えない現在の変貌ぶりには確かに驚く。

○中川昭一
 元自民党衆議院議員。父は元閣僚の政治家・中川一郎。自身も閣僚を歴任したほか、党政調会長を務めた。2009年2月にローマで行われたG7財務相・中央銀行総裁会議の記者会見に酩酊状態で出席、バッシングを浴びて財務大臣を辞任した人。同年10月、自宅寝室で倒れているところを発見されたが死去、56歳。遺族によって発表された死因は急性心筋梗塞。院長曰く、この中川昭一こそが「ACの典型なのでは」とのことだ。


 ACとは『アダルトチルドレン』の略で、AAのミーティングでもこの話題は何度か登ったことがある。両親のうちのどちらか、あるいは両方を依存症者に持ち、自身も同様の依存症者になってしまった患者のことだ。中には幼少期に虐待を受けたりするケースなど、程度の差はあるが、アルコール依存症患者は圧倒的にこのACであることが多い。僕は虐待など受けていないしあまり認めたくはないが、少なからずそのうちのひとりといえる。

 院長によると、ACのケースでは、酒飲みの親に怯えて育った子供が「極端ないい子」になろうとするか、「極端な悪い子」になろうとする傾向があるという。
 中川昭一の場合、大物政治家の2世として生まれた「宿命」に加えて、酒豪でも知られたという父親の影響は何かしらあったのではないだろうか。東大を出て父の地盤を継ぎ、大臣にまで登りつめたが、本当のところは父親のような酒飲みにはなりたくなかったのかもしれない。
 …というはあくまで院長の推測だが、中川昭一という人の辿った人生が、ACの問題と結びついていることは、僕にも疑いのないような気がする。

 僕は今日の学習会を、前から2列目の端の席で聴いていた。最前列中央には和代さんが陣取り、冒頭いきなり院長に「待ってました!」と芝居見物のようなエールを送って熱心に聴いていたようだが、僕はこのあと最後まですっかり熟睡してしまった。
 こうして僕のARP学習会、全11回は終了した。


 夕方の自助グループは、西町教会のAA「カッコー」に参加した。利根川さん、山形さんもミーティングに向かったが、僕は優二さんと一緒に会場へ足を運んでいた。
「まだ時間があるから、ショッピングモールで人間観察していこう」
 らしくないことを提案されたが、言われる通り1階売り場のベンチにふたり並んで腰かけた。優二さんは明日、主治医である院長の回診だ。仕事が決まらない以上、9日に退院するのは不安なのだろう。「退院が延びるかも」と言っていたが、それを望んでいるように僕には思えた。
 沈黙が続いたので、何の気なしに言った。
「…酒飲んでた頃、こうやって人を見ていると、自分以外のすべての人が自分より幸せそうに見えてました」
「そういうことをミーティングで話せばいいんだよ。笑いとろうなんていらないから」
 意外な答えが返ってきた。ミーティングの席で話す際、笑いに執着しているつもりはないのだが、ノープランでだらだら喋ることには抵抗がある。というか、それができない。退屈しているんじゃないか。シラけた雰囲気になったんじゃないか。周囲の反応を気にしてしまうのだ。嘘をついているわけでも、気取っているわけでも、隠したい何かがあるわけでもない。これが今現在の僕なのだ。
 でも、ここで優二さんに反駁しても仕方がない。僕は僕で、今できることをするだけだ。

 AAの場では、少しずつ人の輪に入っていけるようになっているかもしれない。「オオタカ」のナホさんは、ほかのグループのミーティングにも足繁く通っているので顔を合わすことが多い。今日も参加していた彼女に、みんなで帰る道すがら少し話をすることができた。
「ナホさんは今、外来でカウンセリングを受けてるんですよね。僕も院内で受けてるんだけど、なんだか感じがつかめなくて。患者が一方的に喋るカウンセリングでもいいんでしょうか?」
 我ながら、変てこな質問だとは思う。
「私も、自分のことをたくさん喋ってますよ」
 ―― これでいいのか。そりゃそうか、患者は俺なんだ。
 少し安心した。何よりも、こうしてAAで知り合った方と話せることに嬉しさを感じていた。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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2015-03-03 19:47 | カテゴリ:料理
(※5度目のスリップから16日目)
 今日は勝瀬さんの退院の日だ。なんだかナーバスになっている勝瀬さんに「何時頃に出発ですか?」と訊くと、
「まだ分かんないよ。カネ下ろしに行ったりとか、オレも結構忙しいんだ」
 勝瀬さんはベッドに寝転んで漫画を読みながら、僕にそう言った。

 午前中、一宮OTから昨日のSSTでのことを謝られた。演劇の稽古で使うトレーニングにはSSTのウォーミングアップにも応用できるものがあるかもしれないという、以前に僕と一宮さんの間で話に登ったことを彼女が牛本主任へ伝えたところ、
「それじゃあ次のSSTのウォーミングアップはサトウさんに進行してもらいましょう」
 と主任が言ったので、昨日のような運びとなったそうだ。
 昨日のあれは、牛本主任のムチャぶりだった。


 10時半からは、8人の患者と4人の病院スタッフとでシーフードカレーづくりが始まった。僕はOT研修生の女の子と、稲村さんという最近入院した50歳前後の男性患者と一緒にチャパティづくりを担当した。
 仕事の都合で中東のどこだかの国に赴任していたという稲村さんは、毎朝なんだか凄い器具を使って大層なコーヒーを煎れて飲んでいる。焙煎した豆を買ってきて、自分で挽いている。さすがにそこまでではないけれど、優二さんも頻繁に使い捨てのドリップにお湯を注いでコーヒーを飲んでいる。そうしたとき、デイルームは香ばしいいい匂いに包まれる。僕はコーヒーについては、インスタントにミルクと多めの砂糖を投入して飲むのが好きだ。こだわりはない。他人事だから思うのかもしれないが、そんなこだわりの飲み物がほかにあっても、アルコールに依存するのは不思議な気がした。それ以前に稲村さんの場合、そもそもイスラム教徒の多いアラブの国でお酒なんか飲めていたのだろうか。
 あれこれ訊きたかったが、チャパティづくりが余計な雑談を許してはくれなかった。
 生地を発酵させる必要のないチャパティは、全粒粉と塩と水と少量のサラダ油でつくることができるので、ナンよりも手早くできるらしい。全粒粉が手に入らなかったため強力粉での代用となったが、僕ら3人は格闘しながらひたすら生地をこねた。
 途中、丸投げする割にあれこれと口を挟んでくる洋子さんにまたしてもムッとしてしまった。気分もヘコみ、もう料理は今回で最後にしようとまで思ったが、洋子さんのほうが先に退院するため今日が彼女の最後の料理となっていたことをあとで知った。
 今回参加した患者のうち、中山さんも今日で退院のため、このままでは次回からまた人数が減ることになる。洋子さんのあとを引き受ける料理グループのリーダーを誰にするか、食後に話し合いが行われた。
 新参加の稲村さんと須藤さんは、入院して日が浅く勝手が分からないということでパス、今回復帰した節子さんは体調が不安定でお願いできない。僕はといえば木曜に行われる南町教会での自助参加のあと、徒歩で向かえる実家に外泊して金曜昼までに戻るという練習を優先したいので、来週の料理参加じたいを保留した。予定通り1クールちょうどで退院となると、金曜日はあと2回しか来ないのだ。
 必然的に、リーダーは草刈さんか山形さんのどちらか、ということになるのだが、草刈さんは所用のため食後すぐに中座してしまっていた。山形さんは来月から患者会の会長を務めるため、負担はできるだけ軽くさせたい。
 結局、後ほど草刈さんにお願いして、どうしても固辞された際は山形さんにリーダーを引き受けてもらう、ということに半ば強引に決まった。
「何でもかんでもオレかよー」
 とボヤくだけボヤいていた山形さんだが、少なくとも患者会の会長については自分から立候補していたと聞いた。何にせよ、普段から背中が痛いと言いつつミニバレーで汗をかいては死にそうになり、相変わらず日中は眠剤の影響で眼は虚ろ、呂律も回っていない山形さんは本当に大丈夫なのだろうか。
 ちなみに今日のカレーの出来だが、貴重なシーフードの存在感が大量のジャガイモに見事に負けていて、要するに「ごめんなさい」程度にイカだのエビだのがチラチラする具合だった。とはいえ、ブレンドしたルウでつくったカレーの味は旨かった。草刈さんお得意のあり合わせスープも節子さんのポテトサラダも美味しかったが、洋子さんのコーヒーゼリーはうまく固まらず、結局リベンジとはいかなかった。
 そして僕らがつくったチャパティだが、これはもう完全に惨敗だった。「不味くはないが旨くもない。それでいて大量にある」という、最も避けたい惨事を生んでしまった。数十枚はできてしまった。もの珍しさから、みんな1枚は食べてもそれ以上手をつけない。僕はつくった手前、意地でもチャパティに食らいついたが、食べても食べてもチャパティ。おまけに白ごはんもあるのだ。腹チャパティ胃チャパティ。何を言ってるのかよく分からないが、要はそれだけチャパティを頬ばったということだ。
 あとで知ったのだが、チャパティの生地というのは1㎜くらいに伸ばすのが正解らしい。僕らのは「宅配ピザのクリスピーじゃないほう」の生地に似ていた。誰も本場仕込みのチャパティを食べたことがないのだから仕方がない。ともあれ、ご馳走さまでした。


 料理の時間に、勝瀬さんは既に病院を後にしていった。ちゃんとしたお別れができなかったが、これは勝瀬さんの狙いだろう。これからデイケアに通う勝瀬さんだが、またいつスリップして病院に戻るかも分からない。華やかな見送りは恥ずかしいだけで、それを嫌う患者は勝瀬さんに限ったことではないのだ。


 チャパティで膨れあがったお腹をおして、7階アトリエの創作へ向かう。退院までの日数を考えると、この時間もあと3回しかない。
 一宮OTが用意してくれた白絵具と極細筆で、革細工のカードケースに手彫りしたコンビニチェーンのロゴを時間いっぱいかけて縁取りしたが、最後に再度ニス塗りしたら、甘乾きだったため白がほとんど消えてしまった。何やってんだか。次回はもう少し彫りを深くして再チャレンジする。

 夕食後は院内AA「はましぎ」に参加した。メッセンジャーは男性1名、ほかに浅尾さん、須藤さんと僕の計4人でのミーティングだ。僕以外は3人とも、もうすぐ60歳という同世代トリオだ。
 今日のテーマはいつかも挙がった「認める」。僕は改めて入院に至った経緯と、自分がいまだ節酒でいけると思っていること、そしてその考えは僕が自分を依存症と認めていないということではないかと最近気がついた旨のことを話した。
 最後にメッセンジャーの男性からコメントをいただいた。AAのテーマミーティングでは珍しいことだ。
「焦らないでください。『今日は飲まないでいける』と思ったときだけAAに来ていただいてもいいんです」

 焦りは敵だ。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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2015-02-20 13:14 | カテゴリ:ミーティング
(※5度目のスリップから14日目)
 午前5時に起きてサッカーワールドカップをワンセグで観ようと臨んだが、目を覚ましたのは6時過ぎ、日本-コロンビア戦は1対1で後半に入っていた。そこから勝ち越され、結局1対4で完敗。日本代表の1次リーグ敗退の模様を、特に興味もない素振りで観ていた。実際前回大会に比べても、今回のワールドカップにはそれほど関心があるわけではなかった。病院での共同生活の中での自制心もあるが、僕にとってサッカーどころではない、というのが本当のところだ。

 朝の瞑想時、別病棟で何やら工事が行われる旨の周知があった。それに伴い、今日の夜9時から明け方まで水道が止まるという。不眠に悩む患者には一大事だが、仕方がない。

 先日駅前ショッピングモールの 100円ショップで買った木工クラフトのうち、飛行機を作ってみた。本当はもうひとつのイルカと共に、創作の革細工が完成したら余った時間で作ろうと取っておいたのだが、革細工が予想外に時間がかかっているので、この際日中暇なうちに作ってしまおうと思ったのだ。
 飛行機は思ったより簡単に完成した。いわゆる複葉機のデザインで、100円なのでプロペラや車輪が回るなどという気の利いた仕掛けはない。最後にパーツを固定するのに木工用ボンドが必要なのだが、臭いがすると迷惑なのでベッドから出てデイルームで仕上げていたら、たまたまそばにいた洋子さんや節子さん、大田看護師に、
「すごーい」
「私不器用だからできない」
「男の人はそういうの好きだよねー」
 などと話の材料にされ、なんだかんだと関心を向けられた。
 その様子を見ていた米窪さんには、
「そんな作戦を使うとは、ズルいねえ」
 と露骨に言われた。僕は別にみんなの注目を浴びようと思っていたわけではないし、米窪さんもちろん僕をからかってそう言ったのだが、半分は本心のような気がする。米窪さんが絵を描いてみんなの関心を集めたことに、少しだけ反撃した格好になった。ここはそんな小さなことに一喜一憂する、子供のようなオトナばかりだ。
 高津さんは僕の作った複葉機を見て素直に感心して、
「これいいっちゃねー。オレも買って誰かに作ってもらっちゃろ」
 と、またまた他力本願なことを言っていた。僕は「差し上げましょうか」と言いかけたが、やっぱりやめた。これは僕が持ち帰って記念にする。こんなものすら、今までお酒を飲まないと作れなかったのだ。



 午後3時、今日からサードミーティングに入った。参加者は僕を含めて13人、他病棟の患者もいた。ソーシャルワーカーの男性が進行を務め、ほかに丹羽看護師と4階病棟の看護師さん、作業療法士さん、それにワーカーか心理室の研修生がひとり同席していた。
 僕にとって最初のサードミーティングのテーマは、第⑥回『飲酒・薬物使用パターンと対処』。飲酒欲求の引き金を、環境からくる外的要素と、自身の心や身体からくる内的要素に分け、テキストにチェック方式で例が示されている。

〈外的引き金:いつもどのような場所や状況で飲みたくなっていましたか?〉
ひとりで自分の部屋にいるとき/朝起きたとき/仕事の前/仕事をしているとき/仕事が終わったとき/飲み仲間といるとき/家族といるとき/お金が手元にあるとき/異性といるとき/冠婚葬祭/お酒のCMを見たとき/花火やお祭りなどのイベント/スポーツ観戦/風呂上がり/コンビニに行ったとき …etc.

〈内的引き金:あなたにとって「飲みたい気持ち」につながりやすい心や身体の状態はどれですか?〉
空腹/怒り/孤独感/不安/悲しい/淋しい/イライラ/楽しい/恐ろしい/焦り/自信喪失/無力感/落ち込み/妬み/高揚感/不眠/欲求不満/幸福感/プレッシャーを感じる/疎外感/達成感/自暴自棄/周囲の目が気になる/傷ついた …etc.

 チェックが入ったところはもちろん注意が必要だが、チェックが入らなかった箇所に着目することで、飲みたいと思わない場所や状況、飲みたい気持ちにならない心や身体の状態を見つめよう、というのが狙いなのだそうだ。
 けれども残念なことに僕の場合、すべての項目にチェックが入ってしまった。〈外的引き金〉についてはいつもというわけではないが、特に「お酒のCMを見たとき」「コンビニに行ったとき」「仕事が終わったとき」などは〈内的引き金〉の感情とリンクして飲みたい衝動を引き起こす。
 僕の飲酒欲求は、どうやっても避けられないのだろうか。

 次に、『飲酒欲求への対処として、今までにうまくいった方法は?』という設問があった。威張ることではないが、僕にそんなものはない。あったら誰か教えて欲しい。発言を求められ、その通りに答えた。

 最後に、『退院後に飲酒につながりにくい環境をつくるために、どうするか考えてみましょう』という問のもと、以下の項目に〈今まで〉〈これから〉という空欄が設けられ、自分で記入するようになっている。僕は〈今まで〉の欄にだけ、現状を書き込んだ。

*飲みに行ったら?
〈今まで〉:飲んだ。
*家族や職場に依存症であることを伝えるか。
〈今まで〉:家族には伝えた。職場では、直属の上司にだけやんわりと伝えた。
*忘年会などお酒の場に誘われたら?
〈今まで〉:行った。
*昼間過ごす場所は?
〈今まで〉:職場か自室。
*仕事について
〈今まで〉:精神的にしんどい。
*通所する予定の自助グループは?
〈今まで〉:近所のAA。

〈これから〉については、今の時点で僕にはまだ分からない。


 セカンドミーティング以降、このプログラムは毎回消化不良で終わる。前向きな気持ちで臨んでも、結局何もできてない、分かってない、行く道は険しい…、と突き付けられるようで、気分が滅入る。
 そんな中途半端な気持ちで、金曜の料理の打ち合わせを行った。参加者は患者8人、スタッフ4人の計12人。山形さんが加わったほか、中山さんもメンバーに残ってくれた。
 メニューは、シーフードカレーにポテトサラダ。デザートにコーヒーゼリーをリベンジする。カレーにはフライパンで焼いたナスをトッピングしたい、と僕が希望し、洋子さんは白ごはんと併せてチャパティ(インドやパキスタン方面のパン)も作りたい、と提案した。
 買い出しは明日、僕と洋子さんと山形さんの3人で行く。


 勝瀬さんの退院が明後日と聞いた。今日から、退院後に通うデイケアのプログラム体験に入っている。デイケアではミーティングのほか、ヨガや書道、茶道、パソコンなど、様々なメニューから自分でやってみたいことを選択できるらしい。

 午後6時半からは院内AA「ヒナドリ」に参加した。終了後に、退院して昼間はデイケアに通っているはずの峰口さんが入って来た。今週の月曜から、2階病棟に再入院したらしい。
 詳しいことはまだよく分からないが、どんなかたちであれ、ここはリピーターの多い病院だ。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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2015-02-18 12:37 | カテゴリ:レクリエーション
(※5度目のスリップから13日目)
 午前中から51号室の山形さんが、髪を切りたいと米窪さんを訪ねて来た。米窪さんが先日バリカンを買ったのを聞いてのことだ。山形さんはそれを使って自分で刈るという。だけど僕に言わせれば、山形さんは今現在立派な坊主頭で、切るも切らないもないように思うのだが、本人曰く「髪が伸びた」そうだ。この人は夏休みの出店で焼きそばでも売っていそうな風貌もさることながら、素行がとてもユニークで、特に以前の入院時から付き合いのある高津さんとの会話は、まるで兄貴と舎弟だ。
 先日も、喫煙室でタバコを吸っている高津さんのもとへ一目散に駆け込んで来たかと思えば、嬉々とした表情で、
「高津さん! オレ、入院20回じゃなかったッス、19回でした!」
 とどうでもいい報告をして、高津さんに、
「まあ、あんまり自慢にはならんなァ」
 と一蹴されていた。そして今日も、米窪さんからバリカンを借りた山形さんに高津さんが割り込み、
「オレが刈っちゃるけん。やらしてくれ」
 と強引に連れ出して行った。

 しばらくして山形さんは、ほぼスキンヘッドになって戻って来た。


 昼食後、午後1時半からのレクでは再びミニバレーに参加した。先週の筋肉痛はほとんど消えていた。今日は優二さん、利根川さん、山形さんのチームに入り、草刈さん、町坂さん、植中さん、そして本来バレーなんかしてはいけないはずの米窪さんのチームと4対4でゲームをした。
 途中で須藤さんと看護師さんがひとり加わって5人対5人になり、5ゲームくらいしただろうか。スコアは忘れてしまったが、僕らが勝った。というより、最終的な勝敗なんかはどうでもいいのだ。
 まだ探り探りだが、僕は確実にレクを楽しんだ。


 夕食前に病室を訪ねて来た一宮OTから、バレーに参加したことをねぎらわれた。なんだかとても照れ臭かった。
 一宮さんは今日のレクに姿を見せなかった黒部さんに声をかけていた。相変わらず気配りを欠かさない人だ。次回の料理のほうでは、作業療法士の研修生がひとり参加したいと言っているという。もちろん大歓迎だ。
 もうひとつ、なんでも来月11日に病院で夏祭りがあるらしい。沖縄三線の演奏や盆踊りがあるそうだ。僕は興味を持ったが、ビールが欲しくなりそうなイベントだ。お酒なしで盛り上がるのだろうか。


 今日も早出しの夕食のあと、院外AAへ向かった。当初は利根川さんと南町教会の「ヒナドリ」へ行くつもりだったが、利根川さんが急遽体調不良を訴えて休むことになったため、迷った末、西町19丁目教会の「つぐみ」へ行くことにした。こちらは優二さん、山形さん、関根さんらと一緒だ。
「つぐみ」は1ヶ月前、僕が初めて院外自助に参加したグループで、それ以来足を運んではいない。頓服のジアゼパムを飲んで出かけて行った。
 会場には10数名が集まり、他のAAで見知った方も来ていたが、それでもまだ2回目のグループということもあって僕は落ち着かず、会場に着いて早々2錠目のジアゼパムを飲んだ。そのせいか、ミーティングが始まると途端に眠気に襲われ、半分くらいは落ちていたようだ。

 慣れることで油断するのは禁物だが、僕には今、この病院でのARPを楽しんでいる実感がある。


※文中における、病院および病院関係者氏名・団体名、地名等については、すべて仮名とさせていただいています。


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2015-02-17 18:26 | カテゴリ:創作
(※5度目のスリップから12日目)
 月曜午後2持からの学習会も残すところあと3回となった。今日のテーマは『③ 薬について』だ。5ーB病棟担当の室戸薬剤師のレクチャーで『アルコール依存症の薬物治療』と題したプリントが配られ、スライドを併用して実施された。
 内容はおもに、離脱症状の薬物療法について、大量飲酒によるビタミン不足が引き起こす症例や点滴・内服薬の説明と、合併症のひとつである睡眠障害の薬物療法についての解説などで、30分ほどで終了した。今回も当然ながら、基本知識をさらう程度だ。
 冒頭、「退院 4.4年後の死亡率」なるデータが示された。退院後に断酒を継続した場合の死亡率 7.4%に対し、再飲酒した場合のそれは38.5%だという。なかでも肝硬変の死亡倍率は一般人口と比較して26倍と、糖尿病での死亡倍率 4.7倍よりもはるかに高い。
 とはいうものの、退院時の健康状態は患者によって様々だろうし、断酒できても 7.4%の人は5年生きられないというのもかなりヘコむ数字だと思うが、いかがなものか。「退院 4.4年後」という妙な年数もピンと来ない。
 いずれにしてもこのデータによれば、退院後に再飲酒してしまった場合、僕は4割近い確率で次の東京五輪のおもてなしができないということになるわけだ。


 学習会終了後、一宮OTがベッドに訪ねて来た。創作の革細工で僕が作っている、コンビニチェーンのクラブカードケースの件だった。
 僕はカードケースに彫った店名ロゴを白く縁取りたかったのだが、白い染料がないのと、既にニスを塗ってしまったあとだったため、油性のペンで縁取ったらどうかと意外なアドバイスを貰っていた。油性ペンに白なんてあるのだろうか。アトリエにはそんなものあるはずない。もちろん一宮OTは僕の希望に沿えるよう、親切で提案してくれたことなのだが、なんだかかえって残念な出来になるような予感がしたので、僕は白の縁取りを諦めてそのまま仕上げに入ろうと考えていた。
 そんな僕のことを一宮さんはずいぶん気にしてくれていたらしく、革細工キットのメーカーだか染料のメーカーだかへわざわざ問合せて確認してくれたのだという。その結果、白くしたい部分を少し削ってニスを落とし、白い水彩絵の具で縁取りしたあとで再度ニス塗りすれば大丈夫だということを聞いたので、それを伝えに来てくれたのだ。
 不器用な僕にはどうやっても失敗する気がするが、僕のためにここまでしてくれた一宮さんに「もういいです」とは言えない。というより、純粋に嬉しかった。失敗しようが成功しようが、僕もやるだけやるだけやってみようという気持ちになった。

 一宮OTがそこまで気を遣ってくれたのは、このカードケースが認知症の進行する母へのささやかなプレゼントだと、僕が話したからだと思う。僕としてはあまりたいそうに考えていなかったのだが、早くに父親を亡くしている一宮さんは、なんとか手伝いたいと思ってくれたのかもしれない。
 実のところ、母は既に買い物へ外出することもなくなっていた。一昨日から昨日にかけての一時帰宅で母にそれとなく確認してみたところ、肝腎のクラブカードじたいどこへやったか怪しい具合だった。
 それでも、こうなれば最後まで仕上げてやろう。一宮さんの善意を受けてそう思った。この創作には、なんだかとても価値があるような気がした。
 そしてこれが完成して時間が余ったら、今度は米窪さんが 100円ショップで買ってハマっている、あの木工クラフトを作って遊ぼう。例のイルカと飛行機は、まだ手をつけずに置いてある。


 夜は昨日に続いて西町教会のAA「カッコー」へ足を運んだ。利根川さん、優二さん、山形さん、関根さんと僕の5人で向かった。参加者の多くは過去に柏ノ丘病院に入院歴のある人ばかりなので、AA会場での雑談の際は常に昔話になりがちだ。僕は相変わらず話について行けないが、それでも今日は不快ではなかった。

 すべてを前向きに考える。少しずつでいいから、そういう僕でありたい。


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